腸内細菌学雑誌
Online ISSN : 1349-8363
Print ISSN : 1343-0882
ISSN-L : 1343-0882
報 文
キトサンコーティングカプセルの腸内崩壊部位
峯村 剛抜井 一貴朝長 昭仁
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 26 巻 3 号 p. 183-187

詳細
抄録

ビフィズス菌を胃酸から守り,本来生息している大腸へと直接到達させる事を目的としたキトサンコーティングカプセルを開発した.内容物にβ-カロテンを用いた溶出試験の結果,胃液を模したⅠ液では60分以降で若干の溶出が確認され,続く小腸での環境を模したⅡ液で120分間行うと3%程度が溶出した.その後,キトサン膜が溶解性に変化が無いことを確認のためのpH3.5条件下では,移して60分以内にほぼ100%近い溶出を示したことから,設計どおり大腸で崩壊する可能性が高いことが確認された.そこでカプセルの挙動を確認するため硫酸バリウムを充填したカプセルにキトサンコーティングと耐酸性皮膜処理を行い,ヒトにおける消化管での崩壊部位確認試験を行った.結果,1例はカプセルが十二指腸に留まり観察時間内での崩壊は認められなかった.これは何らかの原因で胃及び十二指腸内部に長時間停滞したためと考えられた.残り5例に関しては大腸または小腸で崩壊し,全てでカプセルの崩壊が始まる時間は摂取後4.0~7.5時間と判断された.そして全体が壊れたと見なされる崩壊時間は5.0~8.5時間と判断された.ヒトの消化プロセスからすれば,摂取後にこの経過時間を経て崩壊することは,耐酸性を有し小腸を通過し大腸付近まで崩壊せずに移動するに十分な時間と推察される.小腸で崩壊した例に関しては,硫酸バリウム充填カプセルの比重が大きいため,胃での滞留時間が通常のカプセルより長くなり,小腸内での滞留も長時間になることによって,蠕動運動などの物理的な刺激によりカプセルが小腸内で崩壊した可能性が考えられた.以上本試験の結果から,本コーティングを施したカプセルは通常の崩壊性を示さず,耐酸性を有し,ビフィズス菌を充填したカプセルでは比重が小さいため,大腸内で崩壊する可能性がより高くなると思われる.

著者関連情報
© 2012 (公財)日本ビフィズス菌センター
前の記事
feedback
Top