腸内細菌学雑誌
Online ISSN : 1349-8363
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最新号
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総 説
  • 飯野 勢, 珍田 大輔, 下山 克
    2025 年 39 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/03
    ジャーナル フリー

    青森県弘前市岩木地区での住民健診である岩木健康増進プロジェクトは3,000以上の検査項目を含み1,000人規模で,20年近く継続している.このプロジェクトでの腸内細菌叢の研究として,Helicobacter pylori感染からおきる胃粘膜萎縮により胃酸の分泌が低下し,腸内細菌叢に大きな影響を与えることが判明した.また,脂肪肝であるNAFLDの病態と腸内細菌叢の関わりにおいて,NAFLDはGut-Liver-axisの破綻により酪酸産生菌であるFaecalibacteriumの減少を認めた.また,エクオールとその代謝に関わる腸内細菌叢の関係として,エクオール産生者は特にSlackia isoflavoniconvertensとの親和性が高いことが示された.腸内細菌は,未だ未解明の部分が存在するが,1,000例規模での評価ができる岩木プロジェクトのデータは非常に有用であると考えられる.

  • 細見 晃司, 國澤 純
    2025 年 39 巻 1 号 p. 9-19
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/03
    ジャーナル フリー

    医薬基盤・健康・栄養研究所では,日本人の生活習慣や健康における腸内細菌叢の機能や役割を理解するため,日本人を対象とした大規模な腸内細菌調査に取り組んでいる.また,本研究領域の発展に貢献することを目的に,プロトコルの標準化や解析ツールの開発などを進め,他の研究機関への支援にも力を入れている.そのなかで,疫学と基礎を融合させた腸内細菌研究を推進し,肥満や糖尿病の予防や改善が期待できる腸内細菌の同定や作用機序の解明,腸内細菌が作り出すポストバイオティクスの探索や機能解析,腸内細菌叢の個人差に着目した個別化・層別化研究などを展開している.本稿では医薬基盤・健康・栄養研究所における腸内細菌研究の概要や最新の成果についてご紹介したい.

  • 竹内 直志
    2025 年 39 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/03
    ジャーナル フリー

    腸内細菌とヒトとの相互作用は近年大きな注目を浴びており,この関係性はヒトの病態生理において決定的な要素の一つと認識されている.しかしながら,従来のヒト腸内細菌研究においては「どの」細菌種が宿主の病態生理に関連するかが主要な焦点であり,細菌が「どのように」影響を及ぼすかについての知見は限定的であった.腸内細菌が産生する代謝物は,腸内細菌からのシグナルを伝達するメッセンジャーとしての役割を果たすと考えられる.そこで,本稿ではヒト腸内細菌の機能的側面を明らかにする一つの試みとして,我々が最近実施した腸内細菌と宿主の代謝生理機能との関連性に焦点を当てた腸内細菌オミクス研究について紹介する.本研究では従来のメタゲノム解析に加えて糞便中の低分子化合物を網羅的に探索し,宿主細菌連関を検討した.その結果,インスリン抵抗性被験者において糞便中の炭水化物,特に宿主が利用可能な単糖が増加している点を明らかにした.同化合物は腸内細菌による直接的な代謝物ではないものの,腸内細菌の変化が多糖分解や単糖利用など機能的な変化を介して腸管内の単糖増加に寄与している可能性を示した.本研究は腸内細菌とその代謝物がヒト代謝機能に影響を及ぼす機能的な知見を提供しており,腸内細菌の代謝機能およびその産生物質を標的とした新規治療介入の可能性に道を開くものである.

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