腸内細菌学雑誌
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総  説 <平成25年度日本ビフィズス菌センター研究奨励賞受賞>
腸内細菌による腸管T細胞の誘導機構の解明
新 幸二
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2015 年 29 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

消化管粘膜は常に病原性微生物の侵入の危険にさらされている.同時に腸管内腔には多くの腸内常在細菌が生息している.そのため腸管は高度に発達した免疫システムを備え,免疫細胞は病原性微生物を迅速に排除するとともに有益無害な腸内細菌に対しては過度な応答をしないように制御されている.この高度な腸管免疫システムの形成には腸内細菌の存在が重要であることが知られていたが,その詳細なメカニズムについてはあまりよくわかっていなかった.近年,ある特定の腸内細菌のみが存在するノトバイオーマウスを用いた解析により,個々の細菌種が特定の免疫細胞の活性化を行い全体として統率のとれた免疫システムの構築を担っていることがわかってきた.細胞外寄生細菌や真菌の感染防御に重要なヘルパーT細胞の一種であるTh17細胞は腸内細菌の一種であるセグメント細菌(SFB)によって誘導され,経口的に侵入してきた病原体の感染防御に貢献していることが明らかになった.一方,制御性T(Treg)細胞も腸管粘膜固有層に多く存在し,食餌成分や腸内細菌に対する過剰な免疫応答の制御に関与している.SPFマウスと比較して無菌マウスの大腸ではTreg細胞が顕著に減少しており,クロストリジウム属細菌を無菌マウスに投与すると大腸Treg細胞が強く増加したことから,腸内細菌のうち主にクロストリジウム属細菌が大腸Treg細胞の誘導を担っていると考えられた.また,ヒトの腸内にもTreg細胞の誘導を担うクロストリジウム属細菌が存在していることも明らかになった.

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© 2015 (公財)日本ビフィズス菌センター
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