2019 年 33 巻 4 号 p. 165-174
近年の腸内細菌研究の成果によって腸内細菌は,便そのものを構成するだけでなく,例えば病原体微生物などの外乱因子からのバリアとして働いていると考えられるようになってきた.そのほかにも,ヒトが消化,吸収できない食物由来成分を資化して,短鎖脂肪酸やビタミンといった有用な代謝産物を宿主に供給し,同時に,腸内腐敗産物や二次胆汁酸といった有害な代謝産物を作り出す.さらに,免疫系を刺激したり,肥満と関係していたり,脳機能や腎機能など体の各所と密接に関連していたりするなど,ヒトの健康に非常に重要な影響を及ぼしていることが次々と明らかにされてきている.一般に,自らの腸管に寄生する細菌,特に宿主の健康に資する特定の細菌を対象にして摂取する物質をプレバイオティクスと称する.本稿では,プレバイオティクス開発のきっかけと,その定義の歴史,主な素材やその健康効果など,プレバイオティクス全般を俯瞰するとともに,今後期待される展開についても僅かではあるが触れてみたい.