腸内細菌学雑誌
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総 説
腸内細菌による消化管神経回路の修飾
尾畑 佑樹
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2022 年 36 巻 1 号 p. 21-27

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抄録

消化管は生体内で最大の感覚器官であり,腸の組織内および管腔内の動的な微小環境を常に監視するための巧妙な仕組みを備えている.消化管固有の神経システムである腸管神経系(Enteric Nervous System, ENS)は,腸管ニューロンおよびグリア細胞から構成されており,腸内環境モニタリングにおいて中心的な役割を果たしている.ENSは,消化管生理機能のほぼ全てに関与していると考えられており,その異常は過敏性腸症候群をはじめとする様々な慢性腸疾患の原因となり得る.ENSは自律的に働く神経回路を有するため,その機能の多くは脳からの指令がなくても維持される.一方で,ENSは腸-脳相関(Gut-Brain Axis)の中継基地としての役割も果たしている.近年,腸内微生物がENSの発達や機能に影響を与えることが報告されている.しかしながら,腸内微生物-神経系クロストークの根底にある分子メカニズムは未だ解明されていない.本稿では,腸内細菌由来因子が消化管神経回路を修飾する仕組みについて,我々の知見を交えて紹介する.

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© 2022 (公財)腸内細菌学会
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