2015 年 66 巻 3 号 p. 218-229
品質工学におけるパラメータ設計で用いられる各特性値のばらつきの指標としてSN比が存在する.近年,2重非心F分布がこのSN比の分布を説明することが明らかになり,2重非心F分布の確率特性の吟味の必要性が再認識されている.ただし,2重非心F分布の確率密度関数は複雑な形をしているため,パーセント点を厳密に算出することは困難である.したがって,近似によってパーセント点を算定する方法が考えられてきた.そのひとつとして,2重非心F分布の3次までのモーメントの近似値を利用して2重非心F分布のパーセント点を中心F分布を用いて与える方法が考案された.さらに,パーセント点の算定法に関して,モーメントの近似値を用いてCornish-Fisher展開を適用する計算法が提案された.本研究ではこれらの従来法とは別に,2重非心F分布の1次と2次のモーメントの理論式により計算されるモーメントの値のみを用いる新たなパーセント点の算定法を提案する.さらに,従来の方法による結果と比較し,提案法の有効性を検証する.くわえて,提案法の適用例として,SN比の信頼区間の評価を試みる.