本論文では,グルメ・レイティング・サイトの評価が公式を優遇しているか否かを,サイトからスクレイピングした実データに基づいて統計的に検証する.公式か否かはサイトに登録した各店舗が行なうため,公式か非公式かのランダムな割り当ては存在しない.そこで、まず傾向スコアマッチングを用いて共変量を調整し,平均的に優遇が存在するかどうかを検証する.次に,バンチングによって公式グループが非公式グループより大きくなるレーティング周辺の移動量を推定し,最低レーティング周辺では優遇措置がないことから,単調な優遇措置を仮定する。次に、最低評価の周辺に優遇がないことから単調な優遇を仮定し,その結果が平均優遇量と一致するかどうかを検証する.その結果、平均で約0.02の優遇があり、単調優遇仮定及び局所優遇量の結果から計算される総優遇量と平均優遇量から計算される総優遇量がほぼ一致することが確認された.
混合組立ライン問題とは,組立ラインに対して製品の投入順序を決定する問題である.投入順序を決定するためには,作業編成が行われていることが前提になっている.通常,計画期間中の稼動時間と生産量からサイクルタイムが求められ,ラインバランシングにより作業編成が行われている.そのため多くの研究では,サイクルタイムは,あらかじめ与えられているものとして投入順序を求めてきた.本研究では,コンベヤ速度を調整することでサイクルタイムを変更できる混合組立ラインに対して,ライン停止を発生させずにメイクスパン最小化を目指した問題に取り組んだ.この問題に対して,最適コンベヤ速度の上下限値の設定方法やメイクスパンに与える影響を述べた.また,解法としてSAを適用し,数値実験によりその効果を明らかにした.
本研究では複数の需要シナリオが与えられたもとで共有タスクを認めた混合品種組立ラインのバランシング問題に着目した.すべての需要シナリオでタスクの並びは固定するが,実現する需要に応じてステーション数ならびにタスクとステーションの対応付けは変更できるものとし,2つの混合整数計画モデルを構築して順に解いた.共有できるタスク数は1以下とし,バッファ配置も決定事項に含めた.数値実験より複数の需要シナリオを考慮したラインの設計が平均的には好ましいこと,タスク共有は使用ステーション数の増加を抑える場合があるが想定しないシナリオへの対応力は限られていること,望ましい製造順序はバッファ数に影響されることが明らかとなった.