情報メディア研究
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論文
加藤秀俊の新書メディア戦略 ―中公新書「刊行のことば」から見えるプラグマティズム―
松井 勇起
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2022 年 21 巻 1 号 p. 1-20

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抄録

本論文では,中公新書の「刊行のことば」を執筆した加藤秀俊に着目し,そのメディア戦略を分析 する.その手がかりとして,加藤の執筆した文章を参考にしながら,「刊行のことば」を解釈する.加藤は周囲の研究者や環境からプラグマティズムの強い影響を受けてきた人物である.加藤は「中間文化論」で,大衆文化的である講談社文化と高級文化的である岩波文化の違いを説明し,両者の接近による中間文化化を,新書を事例に説明した.しかし,加藤にとってカッパ・ブックスと岩波新書は中間文化として不十分であり,より理想的な中間文化を目指した.加藤はプラグマティズムの具体と抽象を媒介する機能を応用し,他者同士をつなげつつ,読者に自ら考える力をつけさせることで,大衆社会を全体主義に転じさせにくくすることを意図し,中公新書のメディア戦略を構築した.

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