情報メディア研究
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最新号
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論文
  • 桂 瑠以, 橋本 和幸
    2023 年 22 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2023/06/23
    公開日: 2023/06/23
    ジャーナル フリー

    本研究では,60 代から 80 代の高齢者 1000 名を対象に調査を行い,高齢者のインターネットリテラシー(以下,ネットリテラシー)の実態を明らかにし,ネットリテラシーがウェルビーイングに及ぼす影響過程を検討することを目的とした.その結果,ネットリテラシー,ネット利用への効力感,ネット利用への興味・関心に,年代及び男女による差異が認められた.また,ネットリテラシーがウェルビーイングに及ぼす影響過程として,ネット操作スキル,トラブル対処スキル,ネットでの互助の提供が多いほど,ネット利用への効力感,ネット利用への興味・関心が高まる一方,ネットでの互助の受領が多いほど,ネット利用への効力感,ネット利用への興味・関心が低下すること,ネット利用への効力感,ネット利用への興味・関心が高いほど,ウェルビーイングが高まること等が認められた.これらのことから,高齢者のネットリテラシーを向上させることにより,ウェルビーイングが促進される可能性が示唆された.

  • -進路室・進路資料室との違いに着目して-
    須藤 崇夫, 野口 武悟
    2023 年 22 巻 1 号 p. 28-48
    発行日: 2023/10/06
    公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,高等学校におけるキャリア教育に資する図書・資料などの情報に関して,学校図書館と進路室・進路資料室における提供と活用の現状と課題を明らかにすることを目的として,公立高等学校の学校図書館担当者(一部進路担当者)へ質問紙調査を行った.その結果,学校図書館担当者は,学校図書館においては,学び方,生き方や社会への視野を広げさせる情報に重点を置く一方で,進路室・進路資料室では,主に進路希望が定まった生徒への具体的な情報に重点を置くという差別化を図りながら情報を提供するようにしていると考えていた.また,キャリア教育の支援に対して不安に感じている学校図書館担当者も多かった.学校図書館や進路室・進路資料室が持つ学校の貴重な情報資源を生徒の為に活用できるようにするマネジメントが必要といえる.

  • 大森 悠生, 池内 有為, 逸村 裕, 林 和弘
    2023 年 22 巻 1 号 p. 68-76
    発行日: 2023/10/06
    公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー

    研究者が初めてオープンアクセス(OA)を実現する要因,及び OA に対する認識の経年的な変化を明らかにするために,2016 年から 2022 年にかけて隔年で実施された NISTEP の質問紙調査の回答を二次分析した.結果,研究者が初めて OA を実現する主な要因は,投稿した雑誌や所属機関のポリシーなどの外的な要因であった.OA を妨げる要因のうち,資金不足解消が OA の実現につながっていること,投稿したい雑誌や所属機関が OA ポリシーを策定することによって OA が推進される可能性が示唆された.また,研究者は外的な要因を契機として OA を実現した後,徐々に OA に貢献したい,といった内的な要因が醸成される傾向がみられた.

  • 武田 将季
    2023 年 22 巻 1 号 p. 77-91
    発行日: 2023/10/06
    公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー

    協調的情報検索が盛んに行われることとなって久しい.その一方で,協調的情報検索プロセスにおける行為者間のコミュニケーションの詳細は明らかにされていない.協調的情報検索プロセスに対する効果的な支援等への貢献を目指し,本研究では,行為者間のコミュニケーションを理解することを目的とした.そのために,協調的情報検索タスクに取り組む 5 グループ 16 人の対話分析を行った.

    その結果,協調的情報検索を構成する行動のうち,特に,協調的な情報ニーズの認識,検索結果および情報ニーズの共有,情報検索行動の調整等の検索やタスクを方向付ける行動において,行為者間のコミュニケーションが盛んに行われることが明らかになった.さらに,これらの行動では,先行研究が示唆してきたように,主張や疑問の提示が行われていることを確認した.そして,主張や疑問の提示には,協調や検索には欠かせない多様な役割,機能が包含されていることを明らかにした.

  • ―Medium メディウムと Mittel ミッテルの観点から―
    戸邉 俊哉
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 22 巻 1 号 p. 92-112
    発行日: 2024/03/01
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿は京都学派における思想の相互性を表す Medium と Mittel の言葉に着目して,中井正一の機能概念の意味を明らかにすることを目的とする.機能概念とは,複合的要素を全体のすがたをもって捉える「具体的普遍」を意味する.しかし,具体的普遍の理解には京都学派で二つの系譜がある.一つは漸進しない完結した体系,すなわち Medium としての具体的普遍である.中井は西田幾多郎の「場所」の論理をこのような Medium とみなし,そこでは全てが決定済みであると批判した.さらにカッシーラーの機能概念にも Medium の特徴が見出せるため,中井は非完結な体系としての具体的普遍を構想する.そこで中井は,三木清から要素と体系を Mittel,すなわち手段=目的の階層構造をもつ循環する漸進とする方法を,田辺元からはその漸進を可能にする否定の働きとしての目的なき目的論の「絶対無」と行為の体系を参考にした.中井の機能概念とは,この漸進する手段=目的なき目的図式の絶対無と行為の体系としての具体的普遍である.これら思想的系譜を追うことで,中井が提唱した機能概念としての図書館がなぜネットワーク型の図書館であったのかという理由を本稿では示すことができた.
研究ノート
  • ダブル・シュート方式の有用性の検証
    市野 直親, 石井 大貴
    2023 年 22 巻 1 号 p. 14-27
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー

    日本のテレビドラマ作品は, グローバル市場での資産価値が他国と比して低い. 根源的な理由の一つとして, 画面に登場するのが日本人だけに占められる等の「視聴覚面の特殊性」が挙げられる. この課題を解決するための手法として, 中南米のドラマジャンルであるテレノベラや, ヨーロッパのマカロニウェスタン等で既に用いられたダブル・シュート方式の採用が検討できる. 本研究では, 実際のドラマ撮影現場においてダブル・シュート方式を用い, 複数の言語でビデオクリップを制作した. その後, この方式の有用性を検証するため, 制作したビデオクリップを使って質問紙調査を実施した. 本調査の結果から, ダブル・シュート方式の有用性を見出した一方で,海外視聴者獲得のためには, 出演者の演技や, スタジオセット等の美術的な側面に違和感を持たせないことが重要だということが示唆された.

  • ―発表実施学会と論文掲載媒体の関連性―
    山西(増井) 史子
    2023 年 22 巻 1 号 p. 49-67
    発行日: 2023/10/06
    公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、日本文学・日本語学分野の学会発表と学会誌掲載論文の関連性を検証することである。最初に、学会発表の内容を論文として出版する割合である論文化率の調査を行った。調査対象は当該分野の主要 6 学会で 2010 年~2014 年に発表された 685 件であり、論文化率は 41.5%であった。次に、学会誌掲載論文の内容が学会発表を経ている割合である発表実施率の調査を行った。調査対象は前述の主要 6 学会発行の学会誌に 2010 年~2019 年に掲載された論文 571 本であり、発表実施率は 58.5%であった。両者のデータを統合すると、論文化率と発表実施率が共に高い学会と学会誌の組み合わせがあり、論文化率と発表実施率の相関係数からも関連性の強さが確認できた。それ故、発表学会の主催と論文掲載誌の編集が同一学会である「回帰型」と、発表を実施した学会と論文掲載誌に直接関係が無い「非回帰型」の区別が重要であると結論づけた。

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