2025 年 24 巻 1 号 p. 1-27
1960~1982 年までの間に,野田宇太郎は頒布地を限定した近代文学作品の復刻本を出版している.野田が代表を務めた日本郷土文藝叢書刊行会による復刻本の出版事業は,全 9 作品を確認することができる.それらの復刻本は,同時代の動向(野田が提唱した文学散歩の普及活動や,日本近代文学館による「名著複刻全集近代文学館」シリーズの復刻本の出版など)とも関連しながら,当該頒布地の範囲を超えて,さまざまな図書館でも所蔵されるようになるなど,全国各地へと広まっていったことが確認できる.また,国立国会図書館においては,日本郷土文藝叢書刊行会による復刻本のすべてが所蔵されているわけではなく,納本がなされていない作品も存在している.