抄録
多文化共生社会では、多様な背景を持つ住民の「強み」と「弱み」が場や状況に応じて入れ替わり、相互補完するため、住民が担う役割に流動性が見られる。住民の地域社会への参加に向けた支援の場である地域日本語の場でも、参加者の役割に流動性が見られるべきである。中野と和田は、各々の実践で見られた参加者の役割が流動する様相やその要因を協働で探求してきた。本稿では、この探求の過程で浮かび上がった概念に<不完結性>[岡田 2017]と<委ね>[岡田 2001]という表現を用いて論じる。和田がコーディネーターを務める愛知県の手話プロジェクトと、中野がコーディネーターを務める東京都江東区の事例を取り上げ、<不完結性>と<委ね>がどのように参加者の役割の流動性に繋がったのか考察する。また、地域日本語教育コーディネーターの役割として、<不完結性>への受容と、<委ね>「支え」の関係性づくりへの関わりを論じる。