日本航海学会論文集
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実波浪スペクトルとその波浪中船体応答
武田 誠一佐藤 要小林 顕太郎
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1993 年 88 巻 p. 67-76

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抄録

実船計測で得られた波浪(波高)ならびに波浪中船体運動の資料を解析するとともに,スペクトル形状の違いが船体応答に及ぼす影響について比較検討し,以下に要約する。(1)実船計測で波浪(波高)資料より得られた波スペクトルの中に,P-M型やJONSWAP型のスペクトル形状とは異なる特徴的な波スペクトルが見出された。これらは異なる海域,時間に複数回観測されてり再現性のあるスペクトル形状と考えられる。(2)これらの波スペクトルが得られた海面状態を,P-M型で近似した場合の応答スペクトルと実測応答スペクトルの比較を行なった。II・III型の海面状態では,応答スペクトルの形状はP-M型の場合とは異なったものであるが,有義値や平均周期の推定値に大きな差は認められなかった。(3)スペクトルモデルを用いた比較結果では,有義値の推定に差があることがわかった。また,今回の計測資料が得られた波高が低い海面状態でも,小型船の船体運動に対する影響は大型船に比較して遙かに大きいものであった。今後とも船体応答ならびに波浪資料の収集・蓄積をはかり,I〜III型のような特徴的な波スペクトルが出現する波高範囲の上限について確かめるとともに,他の漁船船型に対する検討も含め実海面における実船の応答特性の推定精度の向上をはかっていきたいと考える。

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