日本金属学会誌
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論文
ナノインデンテーション法を用いた高純度アルミニウム合金の局所力学特性に及ぼす添加元素の影響解明
寺崎 保裕望月 喬史小畠 淳平山本 剛久瀧川 順庸
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2023 年 87 巻 7 号 p. 219-225

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Abstract

Nanoindentation tests were performed on high purity aluminum and its alloys to clarify the effects of the types of additional elements and the effects of interactions between additional elements and grain boundaries or existing dislocations on local mechanical properties. The samples used were ultrahigh purity 5N-Al and high purity Al-Fe, Mn, Cu, Zr and Zn alloys processed by solution annealing or friction stir process (FSP). The results of nanoindentation hardness revealed that the amount of each element and the misfit had a significant effect on deformation resistance of plastic deformation in solution annealed samples. On the other hand, the results for the FSPed samples showed that the existing dislocations introduced by FSP have a significant effect on the plastic resistance. From the values of the nanoindentation hardness ratio of the grain boundary to the grain interior, it is concluded that the segregation effect of the additional elements at the grain boundary on the plastic resistance is small in solution annealed samples and FSPed samples. The results of critical load at pop-in revealed that elements with large misfit act as dislocation sources in solution annealed samples. For the FSPed samples showed that the density of existing dislocations introduced by FSP has a significant effect on the critical load for dislocation generation.

1. 緒言

アルミニウム合金は,軽量であり,加工性・耐食性などにも優れる.そのため,脱炭素社会・循環型社会の実現に向け,添加元素固有の性質を生かした合金設計を行い,より広範な利用の実現が求められている.そこで,第一原理計算などを用いることにより,機械的特性や微細組織形成に影響を及ぼすミスフィットひずみや粒界偏析エネルギー,積層欠陥エネルギー,自己拡散の活性化エネルギーなどが明らかにされてきた1-4.しかし,上記のような添加元素固有の性質が局所的な力学特性に与える影響について,実験的にはあまり明らかになっていないのが現状である.

本研究では,計装化押し込み試験法に着目した.計装化押し込み試験法は,変形の負荷-除荷過程を連続的に測定することにより,硬さなどの材料特性と材料の変形挙動を対応させて評価することが可能な試験である.なかでも,ナノメートル領域に適用されるものをナノインデンテーション法といい,走査型プローブ顕微鏡法(Scanning Probe Microscopy: SPM)を併用することにより,単一粒界や微細な加工組織,析出物など極微小領域の変形挙動を選択的に測定することが可能である.また,局所的な硬さだけでなく,負荷過程においてPop-inと呼ばれる特徴的な力学応答を取得することも可能である.ここで,Pop-inは荷重制御条件下において材料の変形抵抗が急激に低下することに伴い変位がバーストする現象であり,一般に転位の生成・増殖を素過程とする塑性変形開始挙動であると考えられている5.このため,ナノインデンテーション法を用いて,金属材料における局所的な硬さやPop-inを解析することにより,添加元素の影響について実験的な評価を行うことができると考えられる.これまで,主に鉄鋼材料において,局所変形挙動のメカニズムや,局所力学特性に及ぼす粒界や固溶元素,既存転位の影響についての研究が行われてきた6-15.また,ナノインデンテーション法を透過型電子顕微鏡による転位観察や分子動力学シミュレーションと組み合わせることにより,変形中における転位の活動を直接的に評価することも可能になってきた16-19

純アルミニウムにおいては,不純物元素や結晶粒微細化に伴って導入される粒界や既存転位,結晶粒方位の違いが局所力学特性に及ぼす影響や,粒内と双晶粒界近傍における局所力学特性の変化について実験的な研究が行われてきた20-23.また,実験的調査に加えて,シミュレーションによる研究も行われてきており,局所力学特性に影響を及ぼす因子が明らかになってきている24-26.しかし,アルミニウム合金において,添加元素の違いが局所力学特性に与える影響について系統的な理解は得られていない.

そこで本研究では,不純物を排した超高純度アルミニウムと,それをベースとして所定の元素を添加した高純度アルミニウム合金を作製し,粒界および粒内に対してナノインデンテーション試験を行った.測定により得られた局所変形挙動から,ナノインデンテーション硬さやPop-in発生時の臨界荷重を評価し,添加元素の違いによる局所力学特性の変化を考察した.また,加工により導入された転位および粒界が添加元素と相互作用することによる,加工硬化や粒界偏析が局所力学特性に及ぼす影響についても考察を行った.

2. 実験方法

2.1 試料

純度99.9996%の超高純度アルミニウム(5N-Al)と,超高純度アルミニウムをベースとして所定の元素を添加した高純度アルミニウム合金(Al-Fe, Al-Mn, Al-Cu, Al-Zr, Al-Zn)を作製した.詳細な化学組成をTable 1に示す.各合金における添加元素量は最大固溶限以下である.ナノインデンテーション試験には,溶体化材および摩擦攪拌プロセス(Friction Stir Process: FSP)材を用いた.溶体化材とFSP材にはそれぞれTable 2で示すような熱処理を施し,その後各添加元素の添加量が最も大きい試料に対してのみFSPを施した.FSPの施工条件は前進速度を200 mm/min(5N-Al, Al-Mn, Al-Cu, Al-Zr, Al-Zn),300 mm/min(Al-Fe),回転速度を300 min−1(5N-Al, Al-Zr),800 min−1(Al-Fe, Al-Mn, Al-Cu, Al-Zn)とした.FSPでは動的再結晶により結晶粒が微細化されるため,FSP材には溶体化材と比較して粒界や転位が多く導入されていると考えられる.そのため,溶体化材およびFSP材に対してナノインデンテーション試験を行うことにより,添加元素が異なる場合において,加工によって導入される粒界や転位が局所力学特性に与える影響について評価することができると考えられる.

Table 1 Chemical composition of samples (at. ppm).
Table 2 Annealing condition of materials.

2.2 表面研磨

ナノインデンテーション試験では,試料表面が平滑であることに加えて,表面の加工層が取り除かれている必要がある.そのため,各試料は600番-3000番のエメリー紙を用いた平行研磨および,1 µmのダイヤモンドペーストでのバフ研磨を行い鏡面に仕上げた後に,電解研磨を行った.電解研磨には,過塩素酸8%,2-ブトキシエタノール10%,エタノール60%,水22%の溶液を用い,電圧25.0 V,室温,時間10 sの条件で行った.

2.3 ナノインデンテーション試験

ナノインデンテーション試験にはBruker社製Hysitron Triboindenter(TI950)を用いた.ナノインデンテーション試験の条件は,最大荷重200 µN,負荷除荷速度50 µN/s,最大荷重保持時間3 sとした.試験前の試料表面において,SPM像(Fig. 1)を取得することにより,粒界直上および粒内を狙って10-20点ずつナノインデンテーション試験を行った.試験に用いた圧子はBerkovich型であり,先端の曲率半径は標準試料である溶融石英の結果から160 nmと算出された.試験から得られる荷重-変位曲線の最大押し込み荷重および最大接触深さからナノインデンテーション硬さ(HIT)を算出した.また,Hertzの接触理論27から外れる荷重をPop-in発生時の臨界荷重(Pc)とした.HITPcの評価には,平均値と標準誤差を用いた.

Fig. 1

SPM image of ultra-high purity aluminum.

2.4 SEM-EBSD法による平均結晶粒径の測定

電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)の後方散乱電子回折(Electron Back Scatter Diffraction Pattern: EBSD)法を用いて,FSP材の平均結晶粒径を測定した.測定には日本電子㈱製JSM-7001Fを用いた.測定条件は,加速電圧10.0 keV,照射電流13 nAとした.

2.5 TEM観察

FSP材における転位密度の違いを評価するために,透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy: TEM)観察を行った.TEM観察には日本電子㈱製JEM-2100Plusを用い,加速電圧は200 kVとした.また,TEM観察用の試料は,平行研磨およびダイヤモンドペーストでのバフ研磨を行い約100 µmまで薄くした試料に対して,ツインジェット研磨を行うことにより作製した.また,ツインジェットには蒸留水50%,メタノール40%,硝酸10%を混合させた硝酸メタノール水溶液を用い,電圧14.0 V,液温−20℃以下の条件で行った.

3. 結果

ナノインデンテーション試験から得られた,5N-AlおよびAl-213 ppm Feの溶体化材とFSP材における荷重-変位曲線をFig. 2(a), Fig. 2(b)に示す.荷重-変位曲線から,元素の添加により局所変形挙動が変化することが確認できた.また,これらの荷重-変位曲線を解析することにより,ナノインデンテーション硬さおよびPcを決定した.

Fig. 2

Load (P)-displacement (h) curve in nanoindentation of (a) solution annealed ultra-high purity aluminum and Al-213 ppm Fe and (b) FSPed ultra-high purity aluminum and Al-213 ppm Fe.

溶体化材およびFSP材から得られた,HITの結果をFig. 3に示す.溶体化材においては,元素の添加により5N-Alと比較してHITが高くなる傾向にあった.また,いずれの試料においても,粒界の方が粒内よりもHITが高く,IF鋼での報告7と一致する結果であった.FSP材においては,元素の添加による5N-Alからの硬化量が溶体化材よりも大きくなる傾向にあった.

Fig. 3

Nanoindentation hardness for solution annealed and FSPed samples.

Pcの結果をFig. 4に示す.溶体化材においては,FeやMnの添加によりPcが低下した.鉄鋼材料においては,CやSiの添加によるPcの増大が報告されており,それらの報告とは一致しない結果となった9,13.また,FSP材においてはCu, Zrの添加によってもPcが低下した.これはFSPにより既存転位が導入されたためであると考えられ,鉄鋼材料での報告と一致する結果であった14

Fig. 4

Critical load of pop-in for solution annealed and FSPed samples.

4. 考察

4.1 ナノインデンテーション硬さに及ぼす添加元素の影響

溶体化材において,元素添加によりHITが増大したのは,固溶強化が生じているためと考えられる.そこで,Friedelモデル28を仮定し,元素添加量の平方根c1/2に対する粒界・粒内でのHITの値をFig. 5にプロットする.また,Table 3にUesugiらが第一原理計算により求めた各添加元素のミスフィットひずみ1を示す.Fig. 5において,添加元素のミスフィットひずみの絶対値|ε|が大きいFeやMnを添加した試料で,プロットの傾きが大きいことがわかる.このことから,溶体化材においては,添加元素のミスフィットおよび添加量が塑性抵抗に大きく影響を及ぼすことが明らかになった.

Fig. 5

Relationship between nanoindentation hardness and alloying concentration for solution annealed samples in GB and GI.

Table 3 Misfit strain1) and Grain boundary segregation energies in Σ5(210) [100]2) of each element.

4.2 ナノインデンテーション硬さに添加元素と既存転位の相互作用が及ぼす影響

FSP材において,溶体化材と比較してHITが増大する傾向にあったのは,FSPにより導入された粒界および既存転位に起因する,結晶粒微細化強化および加工硬化の影響によるものであると考えられる.結晶粒微細化の影響について考えるため,SEM-EBSDにより得られた平均結晶粒径の値をTable 4に示す.また,Table 4にFSP材における最大荷重時の押し込み深さの平均値を示す.ここで,Itokazuらによると,圧子下の塑性域サイズは半球状と仮定し,その直径は押し込み深さの約10倍であると示されている29.このことから,最も平均結晶粒径の小さいAl-213 at. ppm Feであっても,最大押し込み時の塑性域サイズが結晶粒径以下であることがわかる.そのため,FSP材におけるHITの増大には結晶粒微細化による影響はほとんど影響しておらず,既存転位の導入による加工硬化の影響が大きいと考えられる.そこで,FSP材のHITから溶体化材のHITを差し引いたΔHIT(= HIT_FSPHIT_sol)を転位の導入によって生じた加工硬化量とし,ΔHITに対する添加元素の影響を考える.Fig. 6に示すように,ΔHITはミスフィットひずみの絶対値の大きい元素を添加した試料ほど大きくなった.このことから,添加元素のミスフィットがFSP材の転位密度に影響を及ぼしていることが示唆された.そこで,5N-AlおよびAl-213 at. ppm FeのFSP材に対してTEM観察を行った.Fig. 7に5N-AlおよびAl-213 at. ppm FeのFSP材の明視野像を示す.いずれの試料においても転位が導入されているが,Al-213 at. ppm Feの方が多く転位が存在することがわかった.また,Uesugiらによると,ミスフィットの大きい元素であるFeがFSP中における転位の運動を抑制し,加工後の結晶粒を微細にすることが報告されている30.これらのことから,添加元素のミスフィットによりFSP時に導入される既存転位量が異なることと,FSP材の塑性抵抗には既存転位による加工硬化が大きく影響を及ぼすことが明らかになった.

Table 4 Average grain diameter and average value of maximum indentation depth in FSPed samples.
Fig. 6

Relationship between ΔHIT and misfit strain in GB and GI.

Fig. 7

TEM image for (a) FSPed 5N-Al and (b) FSPed Al-213 ppm Fe.

4.3 ナノインデンテーション硬さに添加元素の粒界偏析が及ぼす影響

添加元素の粒界偏析がHITに及ぼす影響を考察するために,粒内に対する粒界のHITの比(= HIT_GB/HIT_GI)を考えた.溶体化材およびFSP材におけるHITの比の値をFig. 8に示す.また,Table 3にOhteらが第一原理計算により求めた各添加元素のΣ5(210) [100] 粒界における粒界偏析エネルギー2を示す.ここで,粒界偏析エネルギーの値が負に大きいFeやMn, Cuが粒界に偏析しやすい元素であると考えられる.そのため,粒界偏析が生じると,局所的な溶質原子濃度が高くなるために粒内に対する粒界のHITの比は5N-Alの値よりも大きくなると予測される.しかし,Fig. 8の溶体化材の結果において,FeやMn,Cuを添加した試料におけるHITの比は,5N-Alの値と同じかそれ以下であった.次に,FSP材におけるHITの比の値から粒界偏析の影響について考察する.Table 4で示したように,FSP材は溶体化材と比較して結晶粒が微細である.そのため,FSP材の方が粒界エネルギーの大きい粒界が多く存在していると予測される.ここで,アルミニウム合金において,粒界エネルギーの大きい粒界ほど粒界偏析が生じやすくなることが報告されている31.また,FSP材では様々な幾何関係の粒界に対して試験を行うことが可能であるため,溶体化材よりも粒界偏析の影響を評価しやすいと考えられる.しかし,Fig. 8のFSP材の結果において,Cuを添加した試料のみ5N-AlよりもHITの比の値が大きくなったが,FeやMnを添加した試料では5N-Alより低い値であり溶体化材と大きな違いはみられなかった.溶体化材とFSP材の両方において,粒界偏析による影響と思われる変化は認められなかったことから,溶体化材およびFSP材の粒界の塑性抵抗に粒界偏析が及ぼす影響は小さいと結論付けられた.

Fig. 8

Nanoindentation hardness ratio of GB to GI for solution annealed samples and FSPed samples.

4.4 Pop-in発生に及ぼす添加元素の影響

溶体化材において,ナノインデンテーション硬さと同様に,元素添加量の平方根c1/2に対して,粒界・粒内のPcをプロットしたものをFig. 9に示す.ミスフィットの大きい元素であるFe, Mnでは添加量の増加に伴い,Pcが低下していくことがわかる.ここで,結果でも記述したが,鉄鋼材料においては,CやSiの添加によって転位の発生が阻害されることによりPcが増大することが報告されている9,13.このように,溶質原子がPop-inに及ぼす影響が異なる原因としては,アルミニウムと鉄鋼材料の剛性率の違いが考えられる.これまでに,Pop-inの発生する臨界荷重は材料の剛性率に影響を受けることが示されている32.そこで,純鉄の剛性率を80 GPa,アルミニウムの剛性率を26 GPaとすると33,純鉄のPcはアルミニウムよりも約1.5倍大きくなると予想され,純金属の状態においてアルミニウムは鉄鋼材料に比べて転位を生じやすいと考えられる.そのため,母相金属における転位の生じやすさの違いにより,溶質原子が固溶した際のミスフィットひずみが後続転位の障害として働きPop-in現象の発生を阻害する場合と,ミスフィットひずみが転位源として働きPop-in現象の発生を促進する場合といった違いが生じるのではないかと考えられる.ただし,剛性率の低いマグネシウム合金では添加元素の固溶によるPcの増大が報告されている34.これは,マグネシウムがHCP構造であり,Pop-in現象を生じさせるすべり系が少ないことに起因するものではないかと考えられる.このように,Pop-inの発生には母相金属の剛性率および結晶構造が関わっていると考えられ,FCC構造であり剛性率が低いアルミニウムにおいてはミスフィットの大きい元素の固溶によりPcが低下することが明らかになった.

Fig. 9

Relationship between critical load of pop-in and alloying concentration for solute annealed samples in GB and GI.

4.5 Pop-in発生に及ぼす既存転位の影響

FSP材において,Fe,Mnの添加に加えて,Cu,Zrの添加によってもPcが低下したのは,FSPにより既存転位の密度が増大したであると考えられる.そこで,Bailey-Hirschの式を用いることにより,FSPによって生じた加工硬化量ΔHITの2乗が,転位密度ρに比例すると仮定し,ΔHITの2乗に対するΔPcの値をFig. 10に示した.Fig. 10において,負の相関がみられたことから,FSP材においては既存転位の密度がPcの低下に大きく寄与していると考えられる.鉄鋼材料においては,Sekidoらによって高転位密度下では固溶元素がPop-inに及ぼす影響はみられなくなることが報告されているが14,本研究では固溶元素によるPcの低下も生じるため,現状では固溶元素による影響と既存転位による影響を切り離して考えることが困難であった.そのため,Pcに対して固溶元素と既存転位が及ぼす影響の大小関係を明らかにするためには,転位密度や固溶量を変化させた試料について試験を行うなど,今後の詳細な検討が必要であると考えられる.

Fig. 10

Relationship between Pc of FSPed samples and ΔHIT2 in GB and GI.

5. 結言

本研究では,ナノインデンテーション法を用いることにより,超高純度アルミニウムと高純度アルミニウム合金の溶体化材およびFSP材において,ナノインデンテーション硬さおよびPop-in発生時の臨界荷重を評価した.得られた結果から,添加元素の違いによる局所力学特性の変化や,粒界偏析または既存転位密度が局所力学特性に及ぼす影響について解析を行った.

ナノインデンテーション硬さの結果から,溶体化材においては,各元素の添加量およびミスフィットひずみが塑性抵抗に大きく影響を及ぼすことが明らかになった.一方,FSP材の結果から,FSPによって導入される既存転位が塑性抵抗に大きく影響を与えることが明らかになった.また,粒内に対する粒界のナノインデンテーション硬さ比の値から,溶体化材およびFSP材において,粒界偏析が塑性抵抗に与える影響は小さいと結論付けられた.

Pop-in発生時の臨界荷重の結果から,溶体化材においては,ミスフィットの大きい元素が転位源として働くことが明らかになった.これは,アルミニウムがFCC構造であることや剛性率の低いことに起因する結果であると考えられる.一方,FSP材の結果から,FSPによって導入される既存転位の密度が転位発生の臨界荷重に大きく影響を及ぼすことが明らかになった.

本研究で用いた鋳造合金の作製に協力頂いた昭和電工㈱の方々に深く感謝申し上げます.TEM観察については,文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業を利用しています.本研究の一部は,財団法人軽金属奨学会の教育研究資金の援助を得たことを附記して謝意を表します.

文献
 
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