抄録
β-アルミニウム青銅の共析分解變化は極めて阻止され易く,急冷されるときはβ→β1→β'なる不安定中間相變化が起る.この變化は可逆的でβ'状態のものを加熱してゆくと,逆にβ'→β1→βなる變化が起る.勿論このとき同時にβ1及びβの分解變化も進行する. Mnは共析分解を阻止する働きがありそれは添加量の増加と共に強くなる.共析組成の合金を徐冷するときは, Mn 2%以下では共析分解が一部進行するけれども, Mn量が多いと分解が起り得ず, Mn 4~6%では焼入れたものと同様な針状組織を呈し, Mn 8%以上では均一固溶體組織をなす不安定中間相變化はMn 2~6%ではβ〓β1〓β'a〓β'bで與へられ, Mn 8%以上ではβ〓β1で與へられる.β→β1變化温度はMn量の如何に拘らず殆ど一定 (520°) であるが, β1→β'或はβ1→β'a→β'b變化温度はMn量と共に低下し, Mn 8%以上では常温でβ1状態が得られる. β1はβの規則格子構造のものである. β', β'a及びβ'bはβ1とは全く異つた結晶構造を有するもので,顕微鏡下にはいづれも針状組織を示す.この3組織は極めて近似せるもので,その相違は恐らくは原子内的のものであらう.