2021 年 12 巻 p. 1-15
本研究では、1993年の北海道南西沖地震の被害を受けた奥尻島の青苗言代主神社例祭の被災前後の祭礼景観を、GISを用いた「記憶地図」の作成によって可視化し比較した。その結果、以下の2点を明確にした。1点目は、文化歴史的側面に配慮した復興計画は実現できず、例祭の臨場感が損なわれたために、災害以前の祭礼を若い世代へ継承する意義や価値については、後世の人々が祭礼の将来を考えるための判断材料を残し、復興時には災害以前の暮らしとの連続性に着目することの重要性である。2点目は、いずれ生じる自然災害への対応を見据えた際に、公的な行事よりも、地元住民が自主的に行う祭礼と災害を結びつけて災害継承を行うことの有効性である。