抄録
近年, マス・ツーリズムが批判の的とされ, エコツーリズムが推奨された結果, 各地で名前ばかりの「エコ」ツーリズムが氾濫しつつある。また「過疎」に悩む農山漁村地域の振興策の一つとして「観光」が取り上げられるようになっている。
本稿は, 鹿児島県三島村の硫黄島を対象として, 行政による地域イベントの取り組みと発表者自身によるNPOの活動実践を踏まえたものである。
隔絶性の高い小離島である硫黄島においては, その類稀なる自然環境を活かしつつ, 地域住民の生活に経済的に貢献する「持続可能な観光」の必要性が高まっている。かつてリゾート開発に「失敗」した人口減少の激しい過疎地域において, 伝説の多く残る集落に住む人々と旅行者との交流は, 双方にとって大きな恩恵をもたらすはずである。しかし, 観光地域としての課題は, (1) 継続的に観光に関わる住民の少なさ (2) インタープリターの不在等が挙げられる。そこで, 硫黄島においてこれらの課題を克服し, ツーリズムのよる振興の可能性を示す。