抄録
車載カメラで撮影した画像情報の有効利用は,自動車の安全運転を支援するシステムにとり不可欠であるが,多様な状況下でいかに信頼性の高いシステムを構築するかという問題がある.本論文では高速道路での安全走行支援を目的に,多数の画像処理手法を併用することで対天候のロバスト性を高めながら,小型の並列画像処理エンジンの利用により,リアルタイム動作を実現した先行車検出・追跡システムを提案する. 本システムの処理は車両候補領域の抽出,検定,そして追跡からなり,各部では複数の画像処理手法の併用により,対天候のロバスト性の向上を計った.エッジ情報を利用した車両候補領域抽出部では,入力画像の平均エッジ量が低い場合,エッジ抽出前にコントラスト改善処理を自動挿入することで,悪天候時でのエッジ抽出精度の向上を計った.また検定処理では濃淡情報と時系列情報の併用,追跡処理では濃淡テンプレートマッチングとエッジプロファイル手法の併用により,コントラストの悪い状況への対応性向上を実現した.対天候のロバスト性向上のために増大した演算量は,独自開発したプログラマブル並列画像処理エンジンの利用でカバーし,それによりシステム全体が最悪時でも秒15フレームの処理速度で動作できることを確認した.高速道路シーンのデータベースを用いた性能評価では,良好な結果が得られた.