1997 年 8 巻 2 号 p. 19-28
コミュニティ・インボルブメントがバランスのよい観光開発にとって重要な役割を果たしうることは、十分に認識されているにもかかわらず、従来あまり議論されて来なかった。本研究では、アジアにおけるいくつかのケースの分析をもとに、持続可能な観光開発を達成するためにコミュニティ・インボルブメントが果たしうる役割について論じ、観光開発の過程のあらゆる局面において当該地域のコミュニティの関与が必要であることを明らかにする。コミュニティ・インボルブメント、いわゆる地域における観光開発の意思決定、あるいは開発過程への住民の参加については、さまざまな困難が予測されたが、結果的にはあらゆる重要な観光事業関係者に利益をもたらすことが明らかになった。これまで観光におけるコミュニティ・インボルブメントの研究は、主として欧米の事例を対象に、その社会的、文化的背景をもとに論じられてきた。しかし文化や宗教の多様性は、地域住民の観光に対する態度や観光の捉え方にさまざまな影響を与える。その意味でも多様な文化的宗教的背景を持つアジアのコミュニティにおける研究は重要と考えられる。