抄録
アジア太平洋戦争の終結から 76 年、戦争体験者の減少が続くなか、家族や先祖の戦争体験を伝え聞き、足跡やゆかりの地を訪ねる旅について考察する。この場合、ダークツーリズムではなく、むしろ VFR の要素が大きくなる。これはその旅の動機や目的が、「戦争や災害などの悲劇の記憶を巡る」一般化されたものや、「悲劇の記憶を共有し、継承した上で、教訓化する」第三者視点では語りきれない、家族や先祖との個人的つながりに基づくからである。遠く離れたふるさとを訪ねることと同様に、戦争による個人と地域の結びつきを人的交流、相互理解の促進の面からとらえてみたい。