抄録
本研究は,日本の病院における医療安全教育の効果及び医療安全教育の研究上の課題について明らかにするために,国内文献の検討を行った.医中誌Web版を用いた検索を行い,17文献を対象とした.その結果,取り扱われているテーマは医療安全に関する認識・態度の向上,コミュニケーション・確認行動の改善,医療機器・医療材料の取り扱いであり,事例を用いたグループ学習や体験が多く用いられていた.教育・研修参加者の満足度は全体として高く,意識の向上や行動の改善に有用であったという結果が得られた.しかし,意識が高まることで行動の改善やその定着が得られるとは限らず,具体的な行動基準の導入など段階的な介入が有用であること,知識や技術の定着をはかるにはフォローアップが必要であることが示唆された.そして,成果の評価を実証的な研究デザインで行ったものは少なく,今後は質の高い研究デザインや,教育方法の比較,追跡調査が必要であると考えられた.