抄録
従来IIIa型膵損傷に対しては手術療法が主体であったが,近年保存的治療の報告が散見される。今回小児鈍的膵損傷(IIIa型)に対して保存的治療で軽快した症例を経験したので報告する。症例は 9 歳の男児,公園で転倒し腹部を打撲した。腹部CTでIIIa型膵損傷と診断した。バイタルサインは安定しており,腹部症状も軽度であったため保存的治療が可能であると判断した。入院後は絶食・安静・点滴と蛋白分解酵素阻害剤の投与を行った。経過中CTで膵仮性嚢胞の形成を認めたが経過観察にて軽快し,退院となった。小児のIIIa型膵損傷においては保存的治療で軽快する症例があることから,膵単独外傷では保存的治療も選択枝の一つであると考えられた。