日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
症例報告
緊急手術が回避できず術前鑑別診断が十分できなかった腸結核出血・穿孔の1例
森脇 義弘豊田 洋小菅 宇之荒田 慎寿岩下 眞之鈴木 範行杉山 貢
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 19 巻 5 号 p. 272-278

詳細
抄録
出血性ショックを伴ったクローン病として転院搬送された腸結核の 1 例を報告する。患者は62歳,女性。透析導入のための近医入院中に下部消化管造影,内視鏡,生検でクローン病と診断され,ステロイド治療を開始された。感染徴候のない発熱と考え再入院となり,ステロイドと免疫抑制剤で治療されたが改善はなかった。下血と呼吸促迫を伴うショックとなり,人工呼吸管理,カテコラミン投与の後に,外科的処置を目的に当センターへ転院搬送となった。前医の下部消化管造影から必ずしも典型的クローン病とは考えにくかったが,出血性ショックのため緊急手術(右結腸切除)を余儀なくされた。術後はseptic shockから離脱できず第 6 病日に死亡した。患者の死後,切除標本の組織学的検査から,肺症状を伴わない活動性の腸結核と診断された。ステロイドを使用しているクローン病では,常時,腸結核との鑑別を念頭におくべきと思われた。また,情報に乏しい初診患者への緊急対応を余儀なくされる救急部門では,診療が終了してから結核であったと判明した場合に関係した職員の健康診断を行うなどの対策を考案しておくべきと考えられた。
著者関連情報
© 2008 日本救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top