抄録
目的:本邦の学校において突然の心肺停止や偶発的に発生した事故や疾病などが原因で児童生徒が死亡や重度後遺障害に陥った事例を,現独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付資料をもとに分析し,非医療者である教員に対する救急講習のあり方を検討した。方法:1)2004年~2008年の災害共済延べ加入者約8,913万人中に発生した死亡および重度後遺障害例を検討し,その原因や障害の種類を分析した。2)最近のデータベースには記載がないことから1994~1996年の同共済加入者で,心原性死亡および脳卒中で死亡した児の基礎疾患等を分析した。結果:1)2004年~2008年に発生した死亡は645例で,救命に繋がりやすい心原性心停止は157例(24%)であった。そのうち「目撃あり」が126例(80%)と高率であった。同じく救命に繋がりやすい誤嚥窒息による死亡は12例(1.9%)で,12例中障害児が6例(50%),3歳未満の乳幼児が4例(33%)を占めた。重度後遺障害は2,435例で,外傷によるものは2,365例(97%)であった。また発症機転として,スポーツ課目中の発生が1,100例(45%)と半数近くを占めた。2)1994~1996年における心原性死亡および脳卒中による死亡は247例で,そのうち基礎疾患等を持つ児は134例(54%)と過半数を超えた。結論:今回得られた知見は非医療職である教員への救急教育には心肺蘇生法に加えて,外傷に対する教育の必要性を示唆した。