日本救急医学会雑誌
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症例報告
健常成人に発症した銀杏中毒の1例
宮崎 大久保田 哲史林下 浩士鍜冶 有登小林 大祐吉村 昭毅和田 啓爾
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2010 年 21 巻 12 号 p. 956-960

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抄録

症例は41歳,女性。既往歴特記事項なし。銀杏60個を摂食し,4時間後から嘔気,嘔吐,下痢,めまい,両上肢の振戦,悪寒が出現した。6時間後救急要請,当院に搬送となった。来院時呼吸数30/min,脈拍94/min(整),血圧152/90mmHg,SpO2 99%(室内気)と安定しており,意識も清明であった。血液検査では白血球増多,呼吸性アシドーシス,軽度の乳酸値の上昇が認められた。頭部CTでは明らかな異常所見はみられなかった。銀杏中毒と診断し,pyridoxal phosphate(PLP)400mg(8mg/kg)を経口投与し,症状は改善した。入院,経過観察としたが,症状の悪化はなく,第2病日に退院となった。後日,来院時の血清4-O-methylpyridoxine(MPN)濃度は339ng/mlと高値であることが判明した。銀杏中毒は栄養状態の不良な前後に頻発していたが,最近では減少している。原因物質としてMPNが証明されており,中枢神経でビタミンB6(Vit B6)と拮抗して作用し,痙攣を起こすことが推測されている。本症例では痙攣は発症していないが,PLP投与により症状は軽快した。銀杏中毒に対してはPLPを速やかに投与すべきである。

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© 2010 日本救急医学会
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