日本救急医学会雑誌
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原著論文
救命救急センターの現況-全国救命救急センター入室症例予後調査・10万例の検討-
島崎 淳也田崎 修塩崎 忠彦中川 淳一郎池側 均嶋津 岳士杉本 壽
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2011 年 22 巻 10 号 p. 793-802

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抄録

【目的】今回我々は,日本の救命救急センターの現状を明らかにするために,全国の救命救急センターを対象に年間入室患者の予後調査を行った。【方法】対象は平成20年1月1日からの1年間に全国の救命救急センター218施設に入室あるいは外来死亡となった全患者である。調査は各施設の入院台帳をもとに後方視的に行った。【結果】有効回答は78施設(有効回答率35.8%),症例総数は107,237例であった。男女比は男性58.9%,女性41.0%であった。全症例の平均年齢は61.6歳,年齢層別では70歳台にピークを認めた。救命救急センター平均滞在日数は7.7日であった。滞在日数の最頻値は2日で,全体の24.3%であった。滞在31日以上の症例(以下長期滞在症例)は全体の4.2%であった。死亡例は全体の15.3%であった。心肺停止を除いた場合の死亡率は7.8%であった。傷病は,内因性疾患が72.9%,外因性疾患が27.1%であった。各傷病別では外傷が最も多く全体の18.3%,以下心血管疾患(同15.5%),脳血管疾患(12.9%),消化器疾患(11.0%),の順であった。死亡例を傷病別に見ると,心肺停止が最も多く死亡例全体の54.1%を占め,次いで脳血管疾患(同10.3%),心血管疾患(8.0%),外傷(7.9%)の順であった。長期滞在症例の傷病別では,外傷が長期滞在症例全体の32.5%を占め,次いで脳血管疾患(18.2%),心血管疾患(10.1%),消化器疾患(6.8%)の順であった。【考察】今回の調査により,現在の救命救急センター入室患者の傷病構造や予後,滞在期間が明らかになった。内因性疾患が7割以上を占め,また患者の高齢化が明確に示されており,これらのニーズに適合した救急医療体制の整備が必要である。

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