日本救急医学会雑誌
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原著論文
Thoracic Egg®を用いた自然気胸に対する外来ドレナージ療法の評価
江花 弘基栗原 正利片岡 秀之芳賀 高浩
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2011 年 22 巻 10 号 p. 803-809

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抄録

【目的】自然気胸は突然発症する疾患であり,救急外来を受診する患者が多い。初期治療として胸腔ドレナージが必要となる。現状では一般に入院のうえドレナージ治療が行われている。外来ドレナージ治療は患者の生活の質の改善,医療費削減に貢献する可能性がある。しかし,救急外来ドレナージ治療は入院の場合と比べ多くの問題点がある。たとえば医師が必ずしも呼吸器内科医や呼吸器外科医ではなく,また患者情報も救急外来では不足しているなかで行われる。携帯型ドレナージキットであるThoracic Egg®(住友ベーク,以下TE)の治療経験から,気胸の初期治療における外来ドレナージ治療の有効性,安全性および問題点とその対策につき検討した。【対象と方法】気胸研究センターを受診した自然気胸患者167例にTEを用いて外来ドレナージ治療を行った。適応は(1)軽度の呼吸苦や胸痛,(2)発症後1週間以内で胸水がない,(3)II度自然気胸とした。7日後再受診させ肺膨張確認後に抜去する。改善がなければ入院ドレナージまたは更に7日間の外来通院とした。【結果】167例中137例がTEでの外来治療が可能であった。30例は入院治療に変更となった。内訳は26例が拡張不良,3例が血胸,1例が胸膜炎であった。合併症は14例に認めた。血胸2例,胸膜炎1例が入院となった。他11例に微熱等が認められたが外来にて対処可能であった。【結論】TEを用いた自然気胸の外来ドレナージ治療は治療成績,安全性に関して従来の入院ドレナージ治療と同様に有効であると考えられた。しかしながら,患者によるドレーンの自己管理が重要となるため,十分な説明と医療側の24時間対応および明確な管理マニュアルを用いて説明する必要がある。外来ドレナージキットの改良によって,更に安全性と有効性の優れたものが望まれる。

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