日本救急医学会雑誌
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症例報告
心肺停止蘇生後に発見されたびまん性特発性骨増殖症の1例
浜崎 俊明永井 涼子村井 隆太山本 英彦千代 孝夫
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キーワード: 頸髄損傷, 四肢麻痺, 可逆性
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2011 年 22 巻 10 号 p. 810-814

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抄録

症例は80歳の男性。自宅で転倒後心肺停止に陥り,妻が胸骨圧迫をしながら救急車を呼んだ。救急隊到着時心肺停止状態であったため,直ちに蘇生処置が施行された。救急車内に収容後心拍が再開し,補助呼吸を行いながら当院に搬送された。覚知から心拍再開までの時間は14分だった。到着時意識は昏睡,血圧は正常範囲であったが脈拍は128~141/minの心房細動であった。努力様呼吸であったため,経口気管挿管と人工呼吸を開始し,入院加療を開始した。入院後約1週間昏睡であったが,第8病日頃から意識レベルが改善しはじめ,四肢麻痺と頸部以下の知覚脱失を認めた。第10病日に気管切開術を施行し,第11病日頸部MRIを撮影した。頸部MRIでUtsinger's criteriaを満たすびまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis; DISH)と歯突起後面の腫瘤が上位頸髄を圧迫している像を認めた。病歴とMRI画像から,転倒によりこの腫瘤が上位頸髄を更に圧迫して呼吸停止を生じ,引き続いて心停止に陥ったと考えた。意識清明で四肢麻痺が残存し,気管切開・人工呼吸器を装着した状態で第41病日転院した。我々の知る限りDISHが心肺停止に関係したと思われる症例は報告されていない。可逆的な心肺停止の原因に関する知識は重要であり,頸髄損傷がそのような可逆的な心肺停止の原因の一つとなりうることを医療従事者は知っておく必要がある。

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