日本救急医学会雑誌
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症例報告
循環管理にランジオロールが有効であった重症破傷風と非クロストリジウム性ガス壊疽症の1合併例
高橋 学塩谷 信喜松本 尚也菅 重典石部 頼子山田 裕彦遠藤 重厚
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2011 年 22 巻 12 号 p. 885-889

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抄録

【背景】外傷による緊急四肢切断術後の早期合併症として最も多いのは創感染であり,その対策には多数の報告がある。我々は手関節,足関節より近位の緊急切断術では創の一次縫合を行っていたが,創感染が複数例生じたため,2008年から原則としてsecond-look surgeryを行う方針に変更した。今回,創感染率の比較により,この治療戦略変更の妥当性の検証を行った。【対象と方法】治療戦略として一次縫合を行い観察していた前期(11肢)とsecond-look surgeryを行うようになった後期(8肢)の創感染率を比較検討した。また切断部位(上肢,下肢)別も検討した。【結果】患者背景として年齢,性別,糖尿病の有無,ISS,MESSに差はなく,出血性ショックのみ後期のほうが多かった。全体の感染率は前期45%,後期0%(p=0.0395),上肢は前期17%,後期0%(p=0.6),下肢は前期80%,後期0%(p=0.0397)で全体の感染率および下肢の感染率に有意差が認められたが,上肢は有意差が認められなかった。また近位関節を超えての切断は前期後期とも1例ずつあり感染はなかった。【考察】切断肢において,重度四肢開放骨折の初期治療戦略に準じてsecond-look surgeryを導入したところ,感染率の有意な低下を認めた。高度で広範囲な軟部組織の挫滅のため,初回手術で挫滅組織が残存していたり,その後壊死が進行する可能性が高い場合,創感染の発生する頻度が高くなるため,原則としてsecond-look surgeryを行うことが望ましいと考える。ただし,上肢の切断と近位関節を超える切断は一次縫合のままでも感染は少なかったことから,second-look surgeryの適応は少ないと思われる。

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© 2011 日本救急医学会
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