2012 年 23 巻 4 号 p. 170-174
患者は76歳の女性。心房細動,陳旧性脳梗塞でワーファリンコントロール中であった。意識障害のため当院を受診し,頭部MRIで脳梗塞と診断された。血液検査で高度貧血を,腹部エコー検査で腹水貯留が認められ,腹腔内出血が疑われた。腹部造影CTを施行され,大網動脈に約1cmの動脈瘤が見つかった。破裂動脈瘤は通常開腹術か血管塞栓術で治療される。本例の動脈瘤は左胃大網動脈の末梢に存在したため,塞栓術は困難と判断し,手術治療を選択した。また未破裂症例に対しては,近年低侵襲な腹腔鏡手術が適応されている。今回破裂症例ではあるが,術前CTで局在が明らかであり,患者のvital signも安定していたため腹腔鏡手術を選択し完遂した。術後経過は良好で術翌日には抗凝固療法が再開され,第37病日には脳梗塞リハビリ目的に近医へ転院となった。今回の経験から術前精査により局在診断ができ,循環動態が安定しているなどの条件がそろえば,破裂動脈瘤に対しても腹腔鏡での低侵襲治療が可能であると考えられた。