日本救急医学会雑誌
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症例報告
緊張性膿胸を認めた来院時心肺停止の2症例
橋本 修嗣福井 英人那須 道高野崎 浩司八木 正晴
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2012 年 23 巻 6 号 p. 253-258

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抄録
緊張性膿気胸を認めた来院時心肺停止の2症例を経験したので報告する。〈症例1〉21 trisomyの既往のある36歳の男性。心肺停止状態で救急搬送される。心拍再開後に施行した画像検査にて,左胸腔内に一部ガス成分を有する液体成分が充満しており,縦隔は右方に圧排されていた。左胸腔ドレナージを施行したところ膿汁が排出され循環動態が改善したが,第12病日に永眠。膿からはStreptococcus anginosusが検出された。〈症例2〉とくに既往のない57歳の男性。心肺停止状態で救急搬送される。心拍再開後も循環動態が不安定で,胸部X線にて右胸腔内に隔壁を伴うガス像と液体貯留が認められ縦隔が左方に圧排されており,右第2肋間鎖骨中線上に18G針を穿刺施行したが脱気は得られなかった。CT施行後に右胸腔ドレナージを施行したところ膿汁が大量に排出され循環動態の改善を得たが,来院8時間後に永眠。膿からはPrevotella intermediaおよびPeptostreptococcus microsが検出された。膿胸症例において緊張性気胸と同様に患側の胸腔内圧が上昇する病態が存在し,緊張性膿気胸として報告されている。緊張性膿気胸の患者背景,起因菌は一般的な膿胸症例と類似している。緊張性膿気胸の治療戦略は早期の胸腔内減圧,排膿,敗血症のコントロールが重要である。
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© 2012 日本救急医学会
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