日本救急医学会雑誌
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症例報告
汎血球減少を合併したアルコール性ケトアシドーシスの1症例
竹本 正明伊藤 敏孝山本 晃武居 哲洋
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2012 年 23 巻 6 号 p. 259-264

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抄録
アルコール性ケトアシドーシス(alcoholic ketoacidosis: AKA)に汎血球減少を合併した稀な症例を経験した。症例は67歳男の性。自宅で意識障害を起こしていたところを発見され救急搬送された。既往歴はアルコール性肝障害を指摘されていた。生活状況は食事をほとんどとらず,アルコールを多飲していた。来院時意識障害,ショック,低体温の状態であった。来院時の検査所見では低血糖と著明な代謝性アシドーシスを示した。生活状況も加味して考えたところ,AKAが疑われたため,大量輸液,ブドウ糖投与を行ったところ,来院時の症状は改善した。なお,来院時の血中ケトン体分画ではβヒドロキシ酪酸が優位に増加しておりAKAと確定診断に至った。来院時にはなかった汎血球減少が第2病日に出現した。第5病日に骨髄穿刺を行ったところ著明な低形成髄がみられたが,腫瘍性のものは否定的であった。来院時正常であった血清銅,血清亜鉛が第2病日より著明な低下を起こしていた。汎血球減少の原因として低栄養もしくは微量元素欠乏が考えられた。輸血と顆粒球コロニー刺激因子製材の投与,感染症対策を行いながら微量元素を含めた栄養補給を行ったところ,汎血球減少は改善した。第57病日の骨髄穿刺では骨髄形成がみられており,第70病日に転院となった。低栄養や銅・亜鉛の欠乏により汎血球減少がみられたという報告は散見されている。AKAにおいては低栄養や微量元素の欠乏の合併はあり得ることであるため,汎血球減少は注意を要する合併症と考えられた。
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© 2012 日本救急医学会
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