日本救急医学会雑誌
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総説
敗血症におけるneutrophil extracellular traps(NETs),damage-associated molecular patterns(DAMPs),そして細胞死
射場 敏明村井 美和長岡 功田部 陽子
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2013 年 24 巻 10 号 p. 827-836

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抄録

敗血症における生体侵襲としては,病原微生物由来のpathogen-associated molecular patterns(PAMPs)以外にも,生体反応の一環であるアラーミンの関与が大きい。よって侵襲はPAMPsとアラーミンなどの内因性傷害物質をあわせたdamage-associated molecular pattern(DAMP)として捉えることが重要と考えられるようになっている。このうち内因性DAMPsとして注目を集めているのが,好中球由来のヌクレオソームやヒストン,DNAといった細胞死関連物質である。好中球については,2004年に貪食とは異なる機序であるNETosisによって病原体を処理していることが知られるようになり,一躍注目を集めている。NETosisでは,核内に存在するヒストンやDNAと,細胞質内のエラスターゼやミエロペルオキシダーゼといった抗菌タンパクで構成されるneutrophil extracellular traps(NETs)が,細胞膜の破断に伴って細胞外に放出され,これによって病原微生物が捕捉,処理されている。NETosisによる好中球の細胞死は,以前から知られていたネクローシスや,アポトーシスとは異なる形態であり,現在盛んに研究がすすめられている。NETosisに伴って細胞外に放出されたDNAやヒストン,抗菌タンパクには,生体防御に関する側面とともに,血中を循環すると強力な組織傷害性を発揮することも知られており,敗血症におけるNETosisの意義については,大きな関心が寄せられている。

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