日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
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原著論文
院外心肺停止例における死亡後全身CT検査の有用性
矢野 隆郎山内 弘一郎河野 太郎猪山 佑治山下 享芳竹智 義臣
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キーワード: 死因究明, 剖検, 心肺蘇生術
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2013 年 24 巻 11 号 p. 916-924

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抄録
【目的】原因不明の院外心肺停止症例の死因の同定には,剖検による方法が推奨されるが,延岡市地域には監察医制度がなくほとんど実施できていない。代りに死亡後CT(postmortem CT: PMCT)撮影を積極的に行っている。今回我々は,PMCT所見の有用性を死因および心肺蘇生(CPR)に伴う合併症の同定に関して両面から評価した。【対象と方法】2009年1月1日から2011年12月31日の3年間の非外傷性院外心肺停止症例222例中臨床所見のみでは死因が同定できず,PMCT撮影を行った180例を対象とした(男/女 99/81, 年齢 0-100:平均 74.4 歳)。前駆症状,既往歴,身体所見,採血結果による臨床所見に加えPMCT所見から死因を同定し,以前に報告された剖検によって同定された死因(神戸市データ)と比較した。さらにPMCT所見にてCPRの合併症(気胸,肋骨骨折,胸骨骨折)の同定を行った。【結果】死因同定の内訳は,心疾患(虚血性心疾患およびその他の心疾患)8.9%,脳血管障害(くも膜下出血など)8.9%,大血管疾患(大動脈瘤破裂など)12.2%,呼吸器疾患13.3%,誤嚥・窒息 3.9%,原因不明 41.1%であった。監察医制度による神戸市の剖検結果との比較では心疾患の同定率が有意に低く(8.9 vs. 44.7%, p<0.001),原因不明率は逆に有意に高く(41.1 vs. 4.7%, p<0.001),その較差は同程度(35.8 vs. 36.4%)であった。心疾患による死因がPMCT所見にて十分同定できなかった可能性があった。脳血管障害,大血管疾患,呼吸器疾患,消化器骨盤部疾患に関しては同程度の頻度であった。PMCT所見のみで死因が同定できた例は 32.2%,臨床所見との併用で死因が同定できた例は26.7%を占め,合計58.9%の例で死因が同定できた。死因別にみると脳血管障害および大血管疾患のほとんどがPMCT所見のみで同定でき,窒息・誤嚥・呼吸器疾患・消化器骨盤部疾患のほとんどが臨床所見との併用で同定できた。CPRの合併症の内訳は,気胸 6.3%,肋骨骨折 14.9%,胸骨骨折 4.5%であった。【結論】剖検ができない場合,PMCTは原因不明の院外心停止例の死因同定および胸骨圧迫に関連した合併症の同定に有用であった。
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© 2013 日本救急医学会
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