2013 年 24 巻 9 号 p. 758-766
【背景】救命救急センター等で加療が必要な患児を検出する目的で,東京都では病院前救護における乳幼児緊急度判断項目が策定され2009年10月から運用を開始している。【目的】乳幼児緊急度判断項目の妥当性の検証。【対象】2011年2月から2012年3月までの14か月間に,国立成育医療研究センターへ救急車で直接搬送された16歳未満の症例。【方法】診療録を後方視的に検討した。外来死亡・蘇生処置施行・小児集中治療室入室のいずれかに該当するものを緊急度・重症度が「高い」,それ以外は「低い」とした。乳幼児緊急項目に該当した症例のうち緊急度・重症度が高いと判定されたものを適中例,逆に緊急度・重症度が低いと判断されたものをオーバートリアージ(OT)例,さらに乳幼児緊急項目に該当せず緊急度・重症度が高いと判定されたものをアンダートリアージ(UT)例とした。【結果】適中例は41/2,707例。内因性症例が大半を占め,疾患としては中枢神経系の異常が多く,陽性基準項目としては意識レベルの異常への該当が多かった。OT例は69/2,707例。うち75%が熱性痙攣症例であった。一方,UT例は62/2,707例で,外傷,アナフィラキシー,痙攣群発例が大半を占めた。また,判断項目の「循環不全」の該当はなかった。感度は40%,陽性適中率は37%であった。外傷カードを適用し,項目に「アナフィラキシー」「痙攣群発」を追加すれば感度は75%に改善しうる。【結論】東京都で策定された病院前小児緊急度判断基準の問題点と今後の課題を報告した。乳幼児緊急項目は低感度であり,感度改善のために外傷カードとの組み合わせと,「痙攣重積」「アナフィラキシー」の項目を追加することを提案する。また,「循環不全」項目は基準の再検討が必要である。