日本救急医学会雑誌
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症例報告
治療方針の決定に血管造影が有効であった上腸間膜動脈閉塞症の4例
高橋 哲也伊藤 敏孝遠藤 英穂武居 哲洋八木 啓一
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2013 年 24 巻 9 号 p. 812-818

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抄録

【はじめに】上腸間膜動脈superior mesenteric artery(SMA)閉塞症の予後規定因子は腸管壊死の有無であり,近年では発症早期のSMA閉塞症に対するinterventional radiology(IVR)の奏功例が散見される。今回,IVRを含めた治療方針の決定に血管造影が有効であったSMA閉塞症の4例(IVR単独で軽快2例,IVR後に腸管切除術を追加施行2例)を経験したので報告する。【症例】症例1:84歳の女性。発症から12時間後にSMA血栓症と診断された。SMAの起始部から約6cm遠位側に約3cmに渡る造影欠損像を認めた。小腸に分布する複数の分枝にも血栓を認めたが,分枝間の吻合を介して描出される部分もあった。また右結腸動脈は側副血行路を介して描出された。血栓溶解療法を行い発症から15時間後に血流が再開した。症例2:78歳の男性。発症から1.5時間後にSMA塞栓症と診断された。SMAは起始部から約5cm遠位側で数本の空腸動脈を分岐後に閉塞していた。右結腸動脈と回結腸動脈は側副血行路を介して描出された。血栓溶解療法を行い発症から3時間後に血流が再開した。症例3:60歳の女性。発症から2時間後にSMA塞栓症と診断された。SMAは空腸動脈第2枝分岐後より閉塞していた。発症から6時間まで血栓吸引術を行ったが血流再開はなく,腸管切除術を施行した。症例4:74歳の女性。発症から2.5時間後にSMA塞栓症と診断された。SMAは下膵十二指腸動脈分岐後より閉塞しており,腸管に分布する動脈はほとんど描出されなかった。血栓溶解療法と血栓吸引術を行い,発症から5.5時間後に血流は再開したが腸管壊死に陥っており,腸管切除術を行った。【結語】腸管切除術追加施行例はIVR単独軽快例と比較し側副血行路の発達が不良であった。血管造影で側副血行路の発達が乏しく分枝の描出が不良な場合には,IVR施行によりSMA本幹や分枝の血流が再開しても腸管壊死に陥っている可能性があり,注意が必要である。

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