日本救急医学会雑誌
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原著論文
気象データから熱中症救急搬送者数を予測する
布施 明坂 慎弥布施 理美荒木 尚金 史英宮内 雅人横田 裕行
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キーワード: 予測式, 気温, 救急医療体制
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2014 年 25 巻 10 号 p. 757-765

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抄録

目的:熱中症救急搬送数を気象データから予測可能か否かにつき検討を行った。対象・方法:2013年7月1日から9月30日において気象データと日別の熱中症救急搬送者数を集計した。 収集項目は,日別の平均気温,最高気温,最低気温,平均湿度,日照時間,平均風速,降水量で東京都,神奈川県,大阪府の3地域を対象地域とし,消防庁の日別の熱中症救急搬送者数を使用した。東京都のデータから予測式を作成し,3地域で評価を行い,次に補正を加えた予測式を作成した。結果:熱中症救急搬送者数yiは,当日データの平均気温と最高気温の2つに対して相関が高かった(それぞれ0.75)。平均気温を用いて指数関数型の予測式
yi ~ f (Tav,i) ≡ a exp (b Tav,i) + c = 0.3800 exp (0.00007 Tav,i)
を作成し,実救急搬送者数と比較したところ,8月以降についての予測は概ね良好であったのに対し,7月のピークを過小評価していたため,さらに最高気温と最低気温を用いた補正を加えた。 補正を加えた予測式
yi ~ f (Tav,i) + Δf (xi) ≡ (a exp (b Tav,i) + c) + (α T*,i + β)
={0.3800 exp (0.00007 Tav,i) + 1.209 Thigh,i − 33.47 (最高気温Thighの時)
={0.3800 exp (0.00007 Tav,i) + 1.416 Tlow,i − 28.59 (最低気温Tlowの時)
で3地域とも7月をより正確に予測することが可能となった。考察:気象条件に基づいた救急搬送者数の予測は,具体的な数字を示すことで,よりインパクトの高い注意を社会に喚起でき,熱中症の予防につながることが期待される。これまでの報告では,予測式を考案し,実症例数と単純に比較検討したものに留まっていた。今回,より実症例数に近似させる予測式を考案し,熱中症の予防に役立つデータとなるよう心がけた。結語:熱中症の発生を予防するうえで有効な熱中症救急搬送者数の予測式を気象データから考案した。より実数に近似させるための補正を行ったことにより,シーズン初期のピークも予測することが可能であった。

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© 2014 日本救急医学会
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