日本救急医学会雑誌
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症例報告
凝固異常が疑われた外傷性出血に対してNBCA-TAEを施行した2例
安田 英人須崎 紳一郎勝見 敦原田 尚重原 俊輔蕪木 友則片岡 惇
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2014 年 25 巻 3 号 p. 125-131

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抄録

近年,外傷における出血性ショックに対して外科的治療と並んで血管内治療(intravascular radiology: IVR)が選択されることが増加している。N-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)は,低価格で塞栓時間の短縮,塞栓の確実性が得られ,患者の凝固能力に依存しない塞栓物質であるという特徴から,凝固異常を来した外傷性出血に対して有用な手段と考えられる。今回我々は,凝固異常が疑われた外傷性出血性ショックに対してNBCAによる経カテーテル動脈塞栓術が有効であった症例を経験したので報告する。症例1は交通外傷による骨盤骨折により出血性ショックを来した70歳台の男性の症例であった。凝固検査の結果や抗血小板薬の内服により出血傾向に至る可能性があったことから,NBCAによる右内腸骨動脈塞栓を施行した。速やかな止血が得られ状態は安定した。症例2は右側腹部打撲による腎損傷により出血性ショックを来した80歳台女性の症例であった。凝固異常がみられ,後腹膜のタンポナーデ効果に対する懸念があったことから,NBCAによる右腎動脈塞栓を施行した。その後速やかにバイタルサインの安定が得られた。両症例とも凝固異常がみられた症例に対してNBCAが功を奏した症例であった。外傷性出血に対する経カテーテル動脈塞栓術(transarterial embolization: TAE)の際には患者の凝固能力に応じた塞栓物質の選択が重要となり,本症例のように出血傾向が懸念される場合にはNBCAを利用したTAEが有用と考えられる。

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© 2014 日本救急医学会
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