抄録
【目的】プロカルシトニン(PCT)は全身性感染症,とくに細菌感染症で上昇するといわれているが,一方で外傷などでも受傷後早期に上昇する例が報告されている。そこで,外傷患者における受傷後早期PCTを調査し,外傷部位や外傷の重症度,在院転帰との関連を調査した。【対象と方法】2010年4月1日から2012年2月28日までに国立病院機構の11箇所の救命救急センターを受診し,入院を要した外傷患者を対象とした。重症度,来院時(Day0)および来院後12 ~24時間(Day1)のバイタルサイン,CRPとPCTを記録し,外傷部位や外傷重症度とPCTとの関連について単変量解析を用いて検討し,また在院転帰とPCTの関係について多変量解析を用いて検討した。【結果】218名の患者が登録された。Day0とDay1のCRPとPCTを比較するとほとんどの部位の外傷においてDay1で有意な上昇を認めた。ISS(injury severity score)別にみてみるとDay1のPCTはISSが高値になるほど高くなった。Day1のPCTは頭部,四肢,多発外傷で有意にISS>20群で高くなった。在院転帰に関して調査項目の比較検討を行ったところ,GCSおよびDay1のPCTで有意差を認めた。頭部外傷患者に絞ってロジスティック回帰分析を行ったところ,GCSおよびDay1のPCTが説明変数として選択され,両者を組み合わせたROC曲線下面積は0.98309であった。【結語】外傷患者のDay1のPCTは,頭部,四肢,多発外傷では外傷の重症度が高いほど高値となる。また頭部外傷患者では,GCSとDay1のPCTを組み合わせることで,予後予測に有用である可能性がある。