抄録
ビリルビン・ビリベルジンなど胆汁色素は,黄疸の原因にもなり一般に有害であると考えられている。しかし,近年その抗酸化作用をはじめとした生理学的活性が注目され,研究が進んできた。これらの色素は生体内でヘムの代謝産物としてヘムオキシゲナーゼの酵素活性により能動的に産生されている。ビリルビンは,ビリベルジン還元酵素を介してビリベルジンよりつくられ,ビリルビンは酸化されるとビリベルジンになる。このサイクルが抗酸化作用をより強いものにしている。本稿では,ビリルビン・ビリベルジンなどのbile pigmentが,新生児黄疸,脳虚血,虚血再灌流障害,臓器移植,敗血症,急性肺障害,悪性腫瘍など救命救急,集中治療領域において様々な病態で保護的に働いていることを示す研究結果をまとめた。またbile pigmentの効果発現の分子生物学的メカニズム,治療への応用についても考察した。