日本救急医学会雑誌
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原著論文
Talk and Deteriorateの経過を呈した頭部外傷患者におけるD-dimerの検討
中江 竜太髙山 泰広小川 太志直江 康孝横田 裕行
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2014 年 25 巻 6 号 p. 247-253

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抄録

【目的】頭部外傷患者の中には,来院時には会話可能であるが,その後短時間で急速に意識障害が進行する予後の悪い症例が存在する。このような病態はTalk and Deteriorate(T&D)と呼ばれるが,来院時に予測することは困難である。そこで我々は,T&Dを予測するための指標として臨床所見および受傷超急性期の凝固線溶系マーカーを調べ,とくにD-dimer値とその時間的推移について検討したので報告する。【対象】2007年4月から2013年9月までに当院救命救急センターに搬送されたabbreviated injury score(AIS)3以上の頭部単独外傷患者のうち,受傷より1時間以内に凝血学的検査を施行できた,来院時Glasgow coma scale(GCS)score 13以上であった患者98例。【方法】①Talk and Deteriorate群(T&D群)と非Talk and Deteriorate群(non-T&D群)で年齢,性差,GCS,AIS,凝固線溶系マーカーを比較・検討した。②多重ロジスティック回帰分析を行いT&D予測因子を求めた。③来院時,3時間後,6時間後,12時間後に凝固線溶系マーカーを測定し,時間的推移をT&D群とnon-T&D群で比較した。【結果】①AIS(p=0.001)と凝固線溶系マーカーのFDP(p<0.001),D-dimer(p<0.001)に有意差を認めた。②AIS(p=0.02),D-dimer(p<0.001)が独立したT&D予測因子であった。カットオフ値はAIS 5,D-dimer 37.5µg/mLであった。③D-dimer値はいずれの時間においてもT&D群で有意に高い結果となった(p<0.01)。【結語】T&Dの予測に受傷早期のD-dimer値は有用である。

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© 2014 日本救急医学会
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