抄録
熱ショック蛋白(heat shock protein, Hsp)は,熱傷をはじめ感染,炎症,癌化,重金属など各種のストレスを受けた際に生体に誘導される一群の蛋白質である。われわれはヒトHsp70の遺伝子(hsp70)を大腸菌に組み込み,本蛋白質の発現,誘導とその精製を試みるとともに,これを抗原として熱傷症例(熱傷群)血清中の抗Hsp70抗体をWestern blot法ならびにEnzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)法で測定した。なお対照として多発外傷や出血性ショックなどのストレスにさらされた症例(ストレス群)と健常成人(健常者群)の各血清が用いられた。その結果,IgGクラスの抗Hsp70抗体は対照群である健常者群に比し,熱傷群,ストレス群で高値を示し,またこの抗体価は熱傷面積に対し負の相関を示す傾向が認められた。