日本救急医学会雑誌
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海洋スポーツ競技会における救護体制と救急医の役割
太田 祥一村上 元秀根本 学山口 芳裕肥留川 賢一行岡 哲男島崎 修次
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2000 年 11 巻 3 号 p. 111-117

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抄録

背景と目的:スポーツ競技会ではその特徴を考慮した独自の救護体制を構築することが重要である。しかし,海洋スポーツ競技会に関しては救護体制のシステム作りとその運用に関する報告はない。われわれはまず,海洋スポーツ競技会における救護体制に必要な基本方針を策定し,それに則って救護室運営を行ってきた。その結果,海洋スポーツ競技会における円滑な救護室運営に必要な条件を明らかにすることを本研究の目的とした。対象と方法:われわれが担当した17の海洋スポーツ競技会(競技種目はボードセイリング4,ヨット7,ジェットスキー6)を対象とし,1)事前準備の実際,2)救護室の型式,3)準備した記録用紙をもとに,A)救護室利用者とその特徴,B)種目別の利用者の特徴,1日あたり利用者数,医療機関に搬送された傷病者数,C)医療機関に搬送された傷病者の概要,D)運営上問題になった因子について調査検討した。結果:1)事前準備はすべて基本方針通り行われていた。2)救護室は初期には他との混合型が多かった。3-A)利用者総数は557人で後送医療施設に搬送されたのは総数の8.4%であった。3-B)競技種目により利用者の特徴があったが種目別の救護室利用者数は差はなかった。種目別の医療機関に搬送された傷病者数は,ジェットスキーが多かった。3-C)医療機関に搬送された傷病者は四肢の外傷が多くみられたが,これらは他の部位の外傷との合併例が多かった。3-D)運営上大きな支障はなかった。考察:基本方針に沿って事前準備がなされており,その結果救護室運営に関しての問題は生じなかった。救護室で扱う疾患は多岐にわたり,また重症度もさまざまであった。救護室運営はその特徴に併せて事前に救急医療体制全般を総合的に構築することが必要である。救急医はスポーツの現場におけるプレホスピタルケアにも大きな役割を担うことができ,積極的に活躍の場を増やしていくべきであると思われる。

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