抄録
目的:クラッシュ症候群の長期予後を明らかにする。対象と方法:阪神淡路大震災で受傷直後に東神戸病院に搬入された挫滅症候群のうち追跡可能であった8例に対し調査を行った。徒手筋力テストなどの神経学的身体所見を主とする診察と,日常生活動作の問題について面接による聞き取り調査を行った。5例に対しては挫滅部位のCTを施行した。結果:震災後4年経っても,挫滅部位は筋の萎縮を認め,筋力低下も残していた。足関節の機能については背屈だけでなく底屈も障害されていた。足関節の拘縮,足趾の変形を認める例もあった。日常的には全例歩行は可能であったが,「しゃがむ」「坂道,階段を降りる」ことの不自由さを認めた。知覚障害は急性期よりは改善しているものの全例で残存していた。挫滅部位のCT所見では筋の萎縮,脂肪変性を認め,1例では筋肉内の石灰化を認めた。機能障害の強い例と,比較的機能が保たれた例との比較では,血清CPKの差は認めず,リハビリテーションの期間は機能障害が強い例で長かった。機能障害の強い例ではCTで筋の萎縮が著しかった。結語:挫滅症候群の長期機能予後は決して楽観できるものではなく,長期的なフォローアップが必要と考えられた。