抄録
熱傷患者における真菌感染症につき検出された真菌株の薬剤感受性を測定し,投与されたfluconazole (FLCZ)が有効血中濃度を維持しているか,臨床的効果が得られているかについて検証を行った。1997年10月~1998年12月の期間,当院熱傷センターに入院した総熱傷面積20%以上の患者18例の熱傷患者から同定された真菌59株につき酵母真菌薬剤感受性キットを用いて抗真菌薬,FLCZ, amphotericin-B (AMPH-B), flucytosine (5-FC)のMICを測定した。Candida albicans群とnon-albikans群のMIC80値はFLCZ (5.06vs 37μg/ml), AMPH-B (0.80vs 0.48μg/ml),5-FC (<0.125vs 1.79μg/ml)となり,FLCZはC. albicansに対しMIC値8μg/mlを示す菌株が23.7%出現し,non-albikans群では40%以上の株がFLCZに対し耐性を示していた。FLCZの血中濃度は深在性真菌症が診断された6例に経日的にそのトラフ値をHPLC法にて測定した。プロトコール通り投与が行われた4例では投与後3日目には8μg/mlを越え,以後そのレベルを維持した。FLCZを投与された6例の血中β-Dグルカン値の推移は半量投与を含む4例では正常域内または20pg/ml近くまでの下降傾向が認められた。現在のFLCZ投与法でC. albicansに対してはMIC80値5.06μg/mlを十分越える血中濃度を維持することができており,それなりの治療効果も得られているが,今後C. albicansでも抵抗性を示す菌株に対応するためFLCZの維持量の設定も300~400mg/dayをも検討すべきであると考えられた。non-albikans群では大半の株が耐性状態にありAMPH-Bなど他の抗菌薬を検討すべきと考えられた。