日本救急医学会雑誌
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重症頭部外傷患者における軽度低体温療法の体液量に及ぼす影響
木村 眞一渋谷 正徳吉岡 伴樹鵜飼 勲石毛 聡桜井 勝萩原 章嘉
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2001 年 12 巻 4 号 p. 167-173

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抄録

背景:低体温下では低心拍出量,循環血液量の減少,多尿がみられ,著しい体液変動が予想されるが,体液量測定はほとんど行われていない。目的:軽度低体温療法下の重症頭部外傷例における体液量の推移を知ること。対象:GCS 5~8点の頭部外傷7例(男5例,女2例,平均44歳)。ブランケットを用い体表冷却により,直腸温を33.5~34.5℃まで低下させ,その体温を48時間維持したのち,24時間に1℃ずつ36.5℃まで復温した。復温後も最低2日間は,直腸温を37.5℃未満に維持した。方法:インドシアニングリーンの分布容積を循環血漿量(PV, l)とした。生体電気インピーダンス法により測定した全身抵抗値(Resis., Ω)と身長(H, cm)から求めた,H2/resis.を体水分量指標(TBWI)とした。PV/TBWI ratioを用いて,体水分に占める血管内水分の割合をみた。測定は,冷却中(C) (33.5~34.5℃),復温前期(R1) (34.5~35.5℃),復温後期(R2) (35.5~36.5℃),復温後(P) (36.5~37.5℃)の4点で行った。冷却から96時間,8時間ごとの尿量,水分バランスを測定した。結果:浸透圧利尿剤は6例に,チオペンタールは6例に用い,減圧開頭術は5例に行った。PVは,C, R1, R2の各時点でPに比して減少した。TBWIは,R2ではCよりも増加し,PではR2よりも減少した。PV/TBWI ratioは,C, R1, R2の各時点でPに比して低下した。尿量,水分バランスともに有意な変化はなかった。考察:PVの低下とTBWIの増加は血管外水分の異常増加を表し,復温完了後のPVの増加とTBWIの減少は,血管透過性の改善を反映する。結語:軽度低体温療法下の頭部外傷例では,血管内から血管外への水分の移動により血漿量が減少する。

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