日本救急医学会雑誌
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画像からみた蘇生後脳の検討
MRI所見を中心として
熊田 恵介福田 充宏山根 一和奥村 徹青木 光広荻野 隆光小濱 啓次
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キーワード: 蘇生後脳, MRI, 拡散強調画像, CT, SPECT
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2001 年 12 巻 4 号 p. 174-183

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抄録
蘇生後脳の病態をより明らかにするため,magnetic resonance imaging (MRI,以下MRIと略す)所見を中心に,拡散強調画像(diffusion weighted image,以下DWIと略す)の有用性も含め検討した。蘇生後MRIを施行された28例を対象とし,予後良好群7例,植物状態群17例,脳死状態群4例に分け,各々の施行時期におけるMRI所見を中心にCT, SPECT所見についても検討を加えた。その結果,予後良好群のうち完全回復例では,CTおよびMRIで異常所見がみられなかった。後遺症残存例ではMRIにおいて被殻,淡蒼球,視床や後頭葉皮質に異常所見を認めた。植物状態群ではCT上,急性期では脳浮腫,慢性期では脳萎縮がみられたが,MRIでは急性期ではT2強調像で大脳皮質,被殻,淡蒼球,視床を中心として,脳室近傍,黒質,赤核において障害部位を,慢性期ではT1強調像でこれらの部位に異常所見を認めた。DWIは超急性期からの病変部位の描出がより鮮明で,高頻度に異常所見をとらえれた。また,SPECTでは急性期に比べ,慢性期では脳血流量の低下を認めた。脳死群のMRIはT2強調像で白質と灰白質の境界が明瞭で,DWIでは脳全域が高信号となっており,全例同様の所見であった。MRIは病変部の検出能においてはCTに比べ優れ,より詳細な形態学的な情報と,急性期でのT2強調像の高信号は浮腫を,慢性期でのT1強調像の高信号は出血や鉄の沈着を示すなどの,信号パターンの変化による情報を得られた。とくに,DWIではT2強調像で視覚化される以前の状態をとらえられ,早期より障害部位の描出が可能であり,MRIおよび各種画像所見を総合的に判断することによって,蘇生後脳の病態をより明らかにできた。
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