日本救急医学会雑誌
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救急患者におけるアルコール性ケトアシドーシスとアルコール性ケトーシスの検討
横山 雅子堀 進悟青木 克憲藤島 清太郎木村 裕之鈴木 昌相川 直樹
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2002 年 13 巻 11 号 p. 711-717

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抄録

目的:救急外来患者におけるアルコール性ケトアシドーシス(AKA)とアルコール性ケトーシス(AK)の実態を把握することを目的に,救急搬送されたアルコール関連患者のケトン体検索を積極的に行い,AKAとAKの実態を前向き(prospective)に調査し,さらに後ろ向き(retrospective)にもAKAのデータ解析を行った。対象と方法:研究1) 1999年11月から2000年1月までに慶應義塾大学病院救急部に搬送された患者のうち,すべてのアルコール関連疾患において,血液ガス分析,血中ケトン体分画の測定,尿ケトン体検査を行った。研究2) 1988年8月から1999年12月に搬送された全患者のデータベースより,飲酒に関連した患者と大酒家を抽出し,血中ケトン体の上昇または尿中ケトン体陽性を確認し得たアシドーシス症例(pH 7.35未満)をAKAとして,その臨床像を検討した。結果:研究1) 3か月の調査期間のアルコール関連疾患の数は,救急搬送患者940人のうち16人であり,AKAは2人であった。AKを5人に認めた。ケトン体比の低下は75%で認めた。研究2)搬送患者27,952人中,飲酒に関連した患者と大酒家として登録されていた患者は210人であり,このうちAKAは9人であった。研究1)と2)を合わせたAKAの臨床像は,全例男性,主訴は意識障害が多く,低体温4人(36%),低血糖8人(73%)であった。尿ケトン体検査は,血中ケトン体上昇で診断されたAKA 9人のうち55%で陰性,11%で±であった。ケトン体比は全例で著明に低下していた。結語:救急搬送患者においてAKAとAKは,アルコール関連患者の43%と著しく高頻度で認められた。AKAは意識障害,低体温,低血糖,ケトン体比の低下を随伴し,大酒家突然死症候群の病態と多くの共通点がみられた。AKAでは尿ケトン体検査の偽陰性が多く,大酒家のアシドーシスでは救急医はAKAとAKを念頭に診察に当たるべきである。

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