日本救急医学会雑誌
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13 巻, 11 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • ウツタイン大阪プロジェクトより
    植嶋 利文, 平出 敦, 池内 尚司, 重本 達弘, 松阪 正訓, 高橋 均, 坂田 育弘
    2002 年 13 巻 11 号 p. 695-702
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    1998年5月から1年間に大阪府下の病院外心停止症例についてウツタイン様式に準じて記録集計を行い,救急隊により目撃された心停止症例について検討した。5,047例の中で,救急隊により目撃された心停止は312例で発生頻度は100万人当たり35.3人であった。うち175例が心原性,137例が非心原性で,1年後の生存率は心原性では175例中11例(6.2%),非心原性では137例中6例(4.4%)であった。心原性で初期調律が心室細動であった症例は30例あったが,そのうち除細動が施行されたのは30例中12例(40%)のみであった。また心停止目撃後,除細動が施行されるまで5.7±4.9分を要していた。除細動が施行された症例では1年後12例中4例が生存したが,施行されなかった症例では1年後の生存例は1例のみであった。海外のウツタイン・スタディーとの比較では発生頻度,とくに心原性の発生頻度が少なかった。予後は非心原性では差がなかったのに心原性では悪かった。その原因のひとつとして初期調律が心室細動症例の数が少ないことが関連していると考えられたが,救命士による早期除細動の問題も関連しているのではないかと考えられた。
  • 尾世川 正明, 森尾 比呂志, 野本 和宏, 西澤 正彦, 貞広 智仁
    2002 年 13 巻 11 号 p. 703-710
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    成田赤十字病院は新東京国際空港に近接しており,外国人旅行者の救急患者を診療する機会が多い。本報は当院救命救急センターに1993年から2000年までの8年間に入院した旅行中の外国人救急患者82人(男性50人,女性32人:年齢15-82歳,平均年齢47.7歳)を検討した。患者の国籍は米国が31人と最も多く,次いで東アジア29人で,患者の国籍は22か国に及んだ。55人は英語を話したが,英語を解さない24人とはコミュニケーションをとることが最も深刻な問題であった。このようなケースでは,病歴聴取,治療上のインフォームドコンセントの取得,病状説明などが入院時ほとんど不可能であった。疾患の内訳は,消化管疾患(消化管出血,穿孔,腸閉塞,急性虫垂炎など)22%,循環器疾患(急性心筋梗塞,心不全)16%,外傷18%,中枢神経系疾患(脳血管障害,癲癇など)15%,呼吸器疾患(呼吸不全,肺炎など)7%,その他の疾患22%であった。18人(22%)の患者がICU/CCUに入室した。転帰は62人で軽快,不変が10人,簡易な処置で帰国した者3人,死亡7人(9%)であった。ICU/CCU入室率,死亡率ともこの時期の救命救急センター入院患者よりも高かったが,多くの患者が可及的早期の退院と帰国を希望した。そのため入院期間は短く,3日以下が36人,4-10日が19人,11-20日が15人で,全体の平均在院日数は10.8日であった。帰国時,病状のため医療者(医師および看護婦)の付き添いを要したケースが12人,家族もしくは関係者の援助を要したのは20人であった。帰国時,13人は車椅子を使用し,7人はストレッチャーで搬送された。外国人旅行者の救急医療は言語や医療費の問題に加えて,早期退院や早期帰国などの要望を実現するため,病院とスタッフに特例的な努力を強いる。行政は,このような医療を担当する病院に効果的援助を検討するべきである。
  • 横山 雅子, 堀 進悟, 青木 克憲, 藤島 清太郎, 木村 裕之, 鈴木 昌, 相川 直樹
    2002 年 13 巻 11 号 p. 711-717
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    目的:救急外来患者におけるアルコール性ケトアシドーシス(AKA)とアルコール性ケトーシス(AK)の実態を把握することを目的に,救急搬送されたアルコール関連患者のケトン体検索を積極的に行い,AKAとAKの実態を前向き(prospective)に調査し,さらに後ろ向き(retrospective)にもAKAのデータ解析を行った。対象と方法:研究1) 1999年11月から2000年1月までに慶應義塾大学病院救急部に搬送された患者のうち,すべてのアルコール関連疾患において,血液ガス分析,血中ケトン体分画の測定,尿ケトン体検査を行った。研究2) 1988年8月から1999年12月に搬送された全患者のデータベースより,飲酒に関連した患者と大酒家を抽出し,血中ケトン体の上昇または尿中ケトン体陽性を確認し得たアシドーシス症例(pH 7.35未満)をAKAとして,その臨床像を検討した。結果:研究1) 3か月の調査期間のアルコール関連疾患の数は,救急搬送患者940人のうち16人であり,AKAは2人であった。AKを5人に認めた。ケトン体比の低下は75%で認めた。研究2)搬送患者27,952人中,飲酒に関連した患者と大酒家として登録されていた患者は210人であり,このうちAKAは9人であった。研究1)と2)を合わせたAKAの臨床像は,全例男性,主訴は意識障害が多く,低体温4人(36%),低血糖8人(73%)であった。尿ケトン体検査は,血中ケトン体上昇で診断されたAKA 9人のうち55%で陰性,11%で±であった。ケトン体比は全例で著明に低下していた。結語:救急搬送患者においてAKAとAKは,アルコール関連患者の43%と著しく高頻度で認められた。AKAは意識障害,低体温,低血糖,ケトン体比の低下を随伴し,大酒家突然死症候群の病態と多くの共通点がみられた。AKAでは尿ケトン体検査の偽陰性が多く,大酒家のアシドーシスでは救急医はAKAとAKを念頭に診察に当たるべきである。
  • 関 義元, 箕輪 良行, 境田 康二, 笠倉 貞一, 伊藤 善一, 栗原 宣夫, 金 弘
    2002 年 13 巻 11 号 p. 718-724
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    背景:日本国内において,PADPの導入が推奨される基準を満たす地域または施設があるかどうか,未だ検討された報告はなくPADPの妥当性は定まっていない。目的:千葉県船橋市の心停止を調査し,この地域または地域内の施設におけるPADPの導入が推奨されるかどうかを検討する。方法:船橋市は人口550,079人,面積は85.64km2, 65歳以上人口は68,878人で全人口に対する割合は12.6%の都市である。1998年4月から2000年3月までの調査期間にドクターカーが出動した心停止700例につき,船橋市ドクターカー出動記録を用いて後ろ向きにウツタイン様式に基づいた調査を行った。船橋市における単位人年当たりの蘇生対象となった心停止の発生頻度が1,000人年当たり1例以上という基準を満たすかどうか,また,各施設においては5年間に1回以上のAEDの適切な使用が見込まれるかどうか,すなわち5年間に1例以上の目撃された心原性心停止が発生するかどうかを検討した。大規模施設として,ららぽーとスキードームザウス,船橋オートレース場,および2か所の競馬場(船橋競馬場,JRA中山競馬場)の4か所,3施設群を選び,入場者数当たりの目撃された心停止の発生頻度についても調査した。結果:蘇生対象となった心停止は492例発生し,1,000人年当たりでは0.45例となり基準を満たさなかった。駅,老人ホーム,診療所では,5年間に1例以上の目撃された心原性心停止は発生せず基準を満たさなかった。大規模施設では入場者100万人当たりの目撃された心原性心停止は0.35-1.33例の発生があった。すべての施設群で,5年間に1例以上の目撃された心原性心停止の発生があり基準を満たした。結論:今回の検討では,千葉県船橋市において地域でPADPを導入することは推奨されない。今回調査した大規模施設ではPADPの導入が推奨される。ただし,競馬場では医師が開催日に常駐しており,現状でも医師の使用を前提としたAEDの設置が有用と考えられた。
  • 堀江 信貴, 武田 宏之, 平田 勝俊, 辻村 雅樹
    2002 年 13 巻 11 号 p. 725-731
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    当院において過去7年間に急性期脳梗塞77例83ヶ所に対する局所線溶療法を行い,閉塞部位,虚血時間,側副路,出血性脳梗塞につき臨床的に検討し,clinical outcomeを評価した。治療の際は,良好な再開通を得るためカテーテル操作や溶解剤注入など手技上の工夫を行った。発症からの再開通時間は平均215.3分であり,再開通率は83.1%と良好であった。症候性の出血性脳梗塞は11例(13.2%)にみられた。部位別では,中大脳動脈島部(M2)は側副路の有無に関係なく虚血時間のみを考慮して積極的に本治療を行ってよいと考えられた。一方,中大脳動脈水平部遠位(M1 distal),脳底動脈BAは虚血時間,側副路を含めて適応を決定する必要があり,内頸動脈ICA,中大脳動脈水平部近位(M1 proximal)は良好な成績が期待できないと思われた。また虚血時間においては発症より4時間を越えた症例は本治療の効果が期待しにくいと考えられた。手技においては血栓の機械的粉砕を目的とし,適切なガイドワイヤーの選択,頻回のピアシング,血栓溶解薬をパルス状に注入,血栓溶解薬の選択を行う工夫により,良好な再開通率および虚血時間の短縮が得られ,本治療法の成績はさらに向上するものと考えられた。
  • 廣田 哲也, 池内 尚司, 岩井 敦志, 田中 礼一郎, 前野 良人, 鵜飼 勲, 吉岡 敏治
    2002 年 13 巻 11 号 p. 732-738
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    A 24-year-old healthy man was admitted with hemorrhagic shock due to amputation of the bilateral lower limbs. After the first operation on limbs, hyponatremia with sodium wasting and circulatory instability developed on hospital day 2; endocrinological examination showed hypoaldosteronism and subsequently positive left femoral open-wound culturing followed by a persistent septic state. The absolute low value of cortisol and weak response to the rapid ACTH test helped us to diagnose absolute adrenal insufficiency (AI). Refractory hyperdynamic shock was promptly reversed by treatment with intravenous hydrocortisone and we debrided and surgically closed the left femoral openwound that was the source of sepsis. Several authors have shown that serum cortisol concentration is usually high and absolute AI is rare in sepsis. Due to the lack of specific signs and symptoms in AI, it is difficult to distinguish it from septic shock. Our experience shows the utility of endocrinological examination, including rapid ACTH and CRH tests in the diagnosis of sepsis-induced AI and their results show that AI in septic patients appears to be related to both primary and secondary failure.
  • 柿原 直樹, 井川 理, 飯塚 亮二, 宮田 圭悟, 竹中 温, 横野 諭, 藤田 正人
    2002 年 13 巻 11 号 p. 739-743
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    We report a case of bleeding from an arteriovenous malformation of the terminal ileum. A 69-year-old man who underwent mitral valve replacement surgery for mitral stenosis and aortic stenosis suddenly experienced anal bleeding on postoperative day (POD) 61. We diagnosed extravasation from the arteriovenous malformations (AVM) of the terminal ileum by angiography. Transcatheter arterial embolization (TAE) using a tornado coil was undertaken and surgery conducted 7 days later. During surgery, we easily found the coil that revealed the bleeding point using intraoperative fluoroscopy. Preoperative TAE for small intestinal bleeding mat thus be useful for clarifying the bleeding point during surgery.
  • 2002 年 13 巻 11 号 p. 744
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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