日本救急医学会雑誌
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わが国の結核医療の現状と問題点
平成12年厚生労働省「結核緊急実態調査」の分析
藤井 紀男中谷 比呂樹森 亨
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キーワード: 結核医療, 結核実態調査
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2002 年 13 巻 3 号 p. 123-132

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抄録

平成12年に厚生労働省が実施した「結核緊急実態調査」の結果に基づき,現在,わが国における結核を取り巻く問題点を医療現場を中心に解説した。わが国の結核対策は結核予防法に基づき届出が行われ,行政が患者登録,医療の基準の提示等の患者管理を行い,適切な治療を確保する体制となっている。しかし,今回の調査から,届出については,結核予防法に基づく届出からみた死亡数と人口動態統計による結核死亡数に乖離があること,登録者の病名精査により結核以外の疾患が約1割混入していることが明らかとなった。これは届出の正確さ,わが国の結核の状況の評価に関する問題点を示唆するものである。また医療の提供おいては,短期化学療法の選択や結核菌の薬剤感受性検査等が適切に行われていないことを示唆する例があり,治療期間の短縮の推進や薬剤耐性化防止の観点から問題があった。また,結核患者の発病には,医学的な問題以外にも社会的・経済的な背景が大きく影響していることが示唆され,とくに高齢者や基礎疾患を有する者,住所不定者については,医療提供の側面からも早期発見および治療完了率の向上の観点からも十分な留意が必要である。今後,これらの問題を踏まえた対応の重要さが明らかになった。

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