日本救急医学会雑誌
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プレホスピタルケアを目的とした合成12誘導心電図の臨床応用
虚血性心疾患におけるST変化の早期診断のために
森澤 健一郎南家 俊彦桝井 良裕野田 聖一魏 大名明石 勝也
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2004 年 15 巻 8 号 p. 279-287

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抄録

目的:救急搬送などのプレホスピタルケア領域では,心電図の誘導数制限によって虚血性心疾患の診断精度を低下させることが懸念される。そこでわれわれは,計6個の電極から12誘導心電図を合成する合成12誘導心電図法(以下Syn-ECG)を開発し,得られたSyn-ECGが標準12誘導心電図(以下Stn-ECG)と臨床的に近似するかを検討した。方法:Stn-ECGで異常Q波,ST変化を認めた54名(男性38名,女性16名,平均68歳)を対象とし,V1, V3, V5, V6誘導心電図を合成した。Stn-ECGとsyn-ECGのQ波,R波,S波,ST部分,T波の振幅を計測し,Spearman相関係数で比較した。結果:(1) Q波,R波,S波,ST部分(ST部分上昇およびST部分低下),T波の何れにおいても有意な正の相関が確認され,相関係数も良好であった。(2)波形の形態は近似していたが,Syn-ECGでは電位が過小に評価される傾向にあった。結語:本法は,プレホスピタル領域における胸部誘導数の制限に対する解決法になると考えられた。虚血性心疾患の早期診断への応用が期待された。

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